2013年9月23日月曜日

獅子頭の宇野系らんちゅう

らんちゅうの頭部の形=肉瘤の形には、獅子頭(ししがしら)、龍頭(たつがしら)、兜巾頭(ときんがしら)、おかめ頭などの分類があります。

特に宇野系らんちゅうの場合、肉瘤の豊かさも重要な審美要素になるため、肉瘤の形には気を使うべきと考えています。



今回は、その中の「獅子頭」について少し考えてみたいと思います。


ただ、その前に...


金魚の品種の系譜を見ると、らんちゅうは「まるこ」と呼ばれる品種から派生したことになっているのですが、まるこから派生したらんちゅうには2種類あります。

1つは肉瘤を持たない「大阪らんちゅう」で、もう1つが私達が飼育している肉瘤を持つらんちゅう。大阪らんちゅうと区別するために、発祥地にちなんで関東らんちゅうと呼んだり、獅子頭らんちゅうと呼んでいます。

「獅子頭らんちゅう」であって、「肉瘤らんちゅう」じゃ無いんですよね。

すなわち、私達が飼育している肉瘤を持つらんちゅうの基本は「獅子頭」だと考えるのが素直だと言えそうです。

瘤太郎も、獅子頭らんちゅうのバリエーションとして、龍頭や兜巾頭などがある。と考えており、兜巾については、型だけでなく、パーツとして改良の対象にしています。


さて、本題に戻りますが、獅子頭のらんちゅうのイメージって、どんな感じでしょう?

獅子頭タイプの宇野系らんちゅう

こんな感じ?


あるいは...
獅子頭タイプの宇野系らんちゅう

 こんな感じ?



宇野系らんちゅうの愛好会の品評会を見ていると、獅子頭と呼ぶらんちゅうは、

四角く上がった豊かな兜巾と、目下から目先(フンタン)にかけてしっかりと張り出した
肉瘤をもつ個体をいうことが多いようです。

フンタンだけが飛び出て、目下の張り出しが無い魚を、龍頭と呼び、目下の張り出しや兜巾の膨隆を認める魚を獅子頭と呼ぶことが多いのではないでしょうか?


ところが...



 獅子頭とは、ご存知のとおり「獅子舞」の頭部のことなのですが、
一度、Googleなどの画像検索で「獅子頭」と検索してご覧になってみてください。

一般的な獅子舞の頭を真正面から見ると、頭のてっぺんから顎まで、四角いのです。
 目下の張り出しなんて無いのです。

で、この写真を眺めていて、ふと気になったことがあります。

 「オランダ獅子頭はどうなんだろう?」

これまたGoogleで「オランダ獅子頭 品評会」などと検索していただければ
色々な写真を見ることができますが、やはり目下の肉瘤が強く張り出した個体は
とても少ないのです。
目先(フンタン)の突出と兜巾の膨隆は見事な魚が多いのですが、
目の下は、スッキリしている魚が主流のようです。
これは、東錦でも同じでした。

※もっとも、らんちゅうの場合も、主流といえる協会系らんちゅうの場合、
 フンタンは突出しているが目下はスッキリしている個体が多く、
 画像検索をしても目下のスッキリしたらんちゅうが多く表示されます。
 オランダ獅子頭も、これと同じで、目下の張り出しを意識している
 系統の写真が少ないだけで、探せばあるのかもしれませんが...

オランダ獅子頭の肉瘤の形の良し悪しについては、また機会があれば
調べてみたいと思いますが、
いずれにしても、ご本家の獅子舞の獅子頭をじっくり観察してみると、
頭頂部の隆起はあるので、兜巾の膨隆は必要なのでしょうけど、
目の下の張り出しは、特に目立つわけではありません。
そうであるなら、本来、らんちゅうの獅子頭に目下の張り出しは必要なのか?と
いう疑問が湧いてきたのです。

そんな事をぼんやり考えながら、我が家の池を見ていたところ、
会筋三歳の舟の同胎の2匹の魚の違いが気になったのです。

獅子頭タイプの宇野系らんちゅう(目幅の違い)

この2匹は、同胎の魚(会筋三歳)です。

全体のシルエットは、ほとんど同じように見えると思います。

目先(フンタン)も、2匹ともほとんど同じように十分な突出を見せています。

ただ、右の魚の方が、目下の張り出しが目立つように見えませんか?

これは、右の魚の方が、左の魚に比べて目幅が無いためです。
たぶん、2匹の目下の肉瘤の幅は、ほとんど変わらないと思います。
ただ、目が内側に入っている分、 右の魚の方が、目下が張り出して見えるのです。

まだ三歳なので、この先どうなるかわかりませんが、四歳になれば
兜巾も肥大と膨隆を始め、頭蓋骨も更に大きくなってきます。
その時、左の魚は、目の下に発達した肉瘤を持ちながらも、
それに負けない目幅と兜巾を持つようになり、
真正面から見ると獅子舞の四角い顔と同じような形になるのかもしれません。

一方、右の魚は、目が内側に入ってしまってるので、正面から見ると
ツヅミのような形というか、8の字というか、ひょうたんというか、しもぶくれというか...
要するに四角くは見えないはずです。


すなわち、らんちゅうの獅子頭とは、左の魚のように
ふっくらした目下の張り出しを持ちながらも、それに負けない目幅を持ち、
その上に充実した兜巾が乗ることで、正面から見た顔が四角い顔になり、
さらに十分な目先の突出が加わることで、獅子舞の獅子頭と同じような
顔(形)を持つことなのかもしれません。
後2年、五歳になれば完成すると思いますので、楽しみにしたいと思います。

余談ですが、左の魚の目幅の充実は、兜巾の土台の広さと、
背幅の広さにつながっています。

こういった違いを種魚選びに活かすことも、宇野系らんちゅうでは重視されることだと思います。


でも...

獅子頭に目下の張り出しが要らないのであれば...

今、私達が追っかけている頭部の型は「なにがしら」になるんでしょうね。

ちなみに、兜巾頭タイプの魚は、下の写真のように目下だけでなく目先(フンタン)の突出も
ありませんので、獅子頭と見分けることができます。 (別の腹の魚です)
兜巾頭タイプの参考魚



そうそう。上の2匹は全長(尾先まで入れて)60mmほどです。
小さいですよね(^_^;)
系統的に骨格や肉瘤を充実させていくことで、小さくても貫禄のある姿を
見せてくれます。
これも京都のらんちゅうの醍醐味なのではないかと思っています。
五歳で80mmぐらいに育てれば、出るところの出た造形美に優れた
素敵ならんちゅうになります。