2013年10月25日金曜日

宇野系らんちゅうの魅力と楽しみ方(兜巾の膨隆感)

宇野系らんちゅうの魅力の1つが、豊かな肉瘤です。

そして肉瘤の中でも兜巾(ときん)を充実させることが、宇野系らんちゅうだからこそできるの醍醐味なのではないでしょうか。


兜巾とは、らんちゅうの目の上、額の部分に付く肉瘤のことです。

肉瘤の構成は、主に兜巾、吻端(ふんたん)、目の下、目の後ろ(エラの上)の4つのブロックに分かれます。
但し、昨今は、目の後ろの肉瘤は、あまり見栄えが良いものでは無いとされているので、兜巾、吻端、目の下の3つが基本の部位となると考えて良いと思います。

この中で、吻端や目の下の肉瘤が発達している個体は、どのような筋のらんちゅうにも見かけます。

しかし、兜巾の発達した個体は、限られた筋でしか見ることが出来ず、充実した兜巾を持つ個体がコンスタントに出現する筋はとても少ないと思います。

だからこそ、今、兜巾の上がる筋を持っておられる方々に、獅子頭らんちゅうとしての兜巾の大切さを再認識していただいて、兜巾が発達する宇野系らんちゅうの筋をしっかり残して行きつつ、質の良い兜巾へと改良して行っていただきたいのです。


さて、その「兜巾の質」ですが、瘤太郎は以下のように考えています。

兜巾の質の分類
 1)形
 2)厚み(高さ)
 3)肌質
 4)膨隆感
 といった感じです。

「形」は、らんちゅうを上見で見た時の兜巾の輪郭の形状です。
正方形、丸形、長方形、台形などがあり、より幅の広いものが良いと考えています。
できれば正方形か横幅のある長方形が優れていると考え、背のほうが細くなっている台形や、目幅に対して細すぎる長方形は、兜巾の質としては劣っていると考えています。
(瘤太郎は、胴の骨格の良さも重要な要素と考えているのですが、細長の長方形や背の方が細くなっている台形は、胴の骨格が細くなる傾向と考えています。)

「厚み(高さ)」は、横見で見た時の兜巾の隆起の程度で、完成した親魚なら5mm程度あれば充実していると考え、最大では10mm程度にもなる事があります。


「肌質」は、兜巾の表面の状態のことで、凸凹感が無く、水まんじゅうのようにつるんとしたものを理想としています。
変な例えですが、
  つぶあんのおはぎ→こしあんのおはぎ→水まんじゅう
というような感じで兜巾の表面の状態をランク分けしています。
水まんじゅうの肌質の兜巾には深い筋が縦に1本もしくは十字に入る個体もあります。
つぶあんのおはぎのようにブツブツやゴツゴツとした粒状感のある兜巾は評価を下げています。

そして、もう1つの重要な要素が膨隆感です。
膨隆感は、難しい表現ですが、兜巾が他の部位の肉瘤と独立して隆起しており、
兜巾の立ち上がりにくびれた感じがあることです。

上の図では、左側のようになだらかに隆起している兜巾と、右側のように外に膨らみながら隆起している兜巾とを比べた場合、例え兜巾の高さが同じでも、左側の兜巾は見る角度によって高さを感じられなくなることがありますが、右側の兜巾は、どの角度から見ても、しっかり盛り上がっているように見えます。
この兜巾の付け根のくびれ感が、膨隆感を演出するために重要なポイントなのですが、このような形に膨らむ兜巾を持つ魚は極めて少なく、我が家でもなかなか出てくるものではありません。



あまり良い写真ではありませんので、また撮影しなおして差し替えますが、左の魚は膨隆感の少ない兜巾を持つ魚で、右は膨隆感のある兜巾を持つ魚です。
実際の兜巾の高さ(厚み)は、左の魚の方があるのですが、膨隆感が乏しいため目立たないのです。

 ・ ・ ・ ・ ・

このように、形、厚み、肌質、膨隆感といった質を高めていくことが、メリハリのある肉瘤を持つらんちゅうを作っていく上で必要なことだと考えています。

ただ、そのためには、良質な兜巾の遺伝子を持つ魚を手に入れなければならないことと、
兜巾が充実してくる年齢まで(4歳以降)魚を残していく方法を知っておくことです。


残念ながら、いくら餌を付けたところで、兜巾の上がる筋の魚でなければ兜巾の充実は期待できません。(我が家にも、兜巾の上がる筋と上がらない筋があります。)
兜巾の上がる筋でも、良質な兜巾を持つ魚の出現率は低いので、4歳の秋頃まで期待できそうな魚を残して置かなければならないのです。
でも、何十匹も残してられません。だから兜巾が出そうなタイプを見分けて残して置かなければならないのです。

兜巾の出そうなタイプは、すなわち「兜巾タイプ」ということになるのですが、兜巾タイプの目安は、胡瓜型で丸胴の胴を持ち、獅子頭タイプの兄弟魚に比べて吻端や目下の発達が控えめなことです。
そういうタイプを4歳まで残しておければ、「当たり」ならばあるときから急に隆起してきます。
(はずれ→まったく肉瘤があがらない残念な魚)


時々、兜巾は、体の成長が止まってから隆起する。という話を聞きますが、瘤太郎の池で見る限りではそういうわけでもなさそうです。
ただ、兜巾タイプの兜巾が上がってくるのは獅子頭タイプより遅いです。
兜巾タイプはもともと吻端や目下の発達が控えめなので、兜巾が上がり始めるまでは、本当に寂しい顔つきをしてます(^_^;)
ついつい「もう無理かなあ」なんてハネてしまいそうになるんですよね。

2013年10月20日日曜日

宇野系らんちゅうのスタンダードとは?

あなたにとっての宇野系らんちゅうの魅力ってなんですか?

面かぶりや腰白など、鮮やかな赤と白に染め分けられた色柄の美しさですか?

それとも、獅子頭や兜巾頭などの肉瘤の美しさ?

あるいは優雅な泳ぎ?尾形?

いやいや、見た目だけじゃなくて、血統を意識したブリーディングが面白いんだ。とおっしゃる方も多いかもしれませんね。(瘤太郎もこのタイプです)

瘤太郎は、偉大な先達である宇野仁松氏が遺された血統が、数十年の時を経て、様々なスタイルで愛されていることこそが宇野系らんちゅうの魅力だと考えています。

逆に、瘤太郎は、「宇野氏の魚」がどういったものだったのかについては、あまりこだわっていません。
何故かと言うと、もう今となっては、宇野氏の魚のことを体系的に調べていくのは無理だと考えているからです。

宇野氏の魚だといわれる写真が何枚か残っているようですが、その何枚かの写真が宇野氏の魚の全てを語っているとは思えません。
宇野氏だって、色々なタイプを楽しまれておられた可能性がありますよね。
年代によって飼っておられたらんちゅうのタイプが違っていた可能性だってあります。
今、残っている写真は、ある一瞬の「記録」でしか無いと思うんです。
宇野氏と交流のあった方が、それぞれに思い出話の内容が違うのも、そういう背景があってこそなのではないでしょうか。

宇野氏が、らんちゅうを極めた方なのであれば、1つのタイプに固執したのではなく、色々なタイプを育ててみた中で、らんちゅうの軸やバリエーションを見出して行かれたのではないでしょうか。
だからこそ、沢山の人に慕われたのではないのでしょうか...

もし、そうなのであれば、その「色々なタイプのらんちゅうから見出した軸やバリエーションを体系的に書き残したもの」が見つからない限り、 宇野氏の魚を整理をすることは無理だと考えています。

でも... だからこそ、今、多様に広がって楽しまれている宇野系らんちゅうを見ながら、氏と同じように「自分なりの軸やバリエーション」を見つけていくことが楽しいのではないでしょうか?
この楽しみがあるから、宇野系らんちゅうを特別ならんちゅうとして魅了される方が多いのではないでしょうか。

私が宇野氏について考えているのは、それだけです。

本当は、「宇野系」って何?と聞かれても明確な定義ができないから、 このブログでは「宇野系」という言葉は使いたくなかったんです。
だけど、ネット検索などのことを考えると「宇野系」というキーワードを使わざるを得ないので、使わせていただいています。
その辺りの心情をお汲み取りいただければと思っています。

●宇野系らんちゅうのスタンダードとは?

さて、話をこの記事のテーマに戻したいのですが、「様々なタイプとして楽しまれていることこそが宇野系らんちゅうの魅力」と考えた場合、宇野系らんちゅうのスタンダードって何なのでしょうか?

答えは簡単...

「宇野系らんちゅうのスタンダードを1匹の魚で定義することはできない」

それが答えなんじゃないでしょうか。



あえて、今、各地で楽しまれている様々な宇野系らんちゅうに共通する「スタンダード」を考えるなら...
「多様な魅力を追求する」

ということぐらいでしょうか。

そうなると、見た目のスタンダードというより考え方のようなものになっちゃいますね。

それぐらい、宇野系らんちゅうというのは、見た目に関しては多様であると思っています。

例えば、色柄については、猩々、素赤、腰白、面かぶり、黄頭など多様な模様があり、ベタ赤のヒレを上とするといったようなマニアックな楽しみ方もありますよね。

肉瘤は、まったく出てないのはさすがに宇野系としてはNGだと思いますが、オカメタイプは兜巾を持ちえませんし、兜巾タイプの吻端は控えめです。
吻端がなければダメとか兜巾がなければダメというものでも無いように思います。
「獅子頭らんちゅう」 ですから、「獅子頭が基本」ということはできると思いますが、それだけだと宇野系の多様性は半減しちゃいますよね。
獅子頭としてはどう、オカメ頭としてはどう、兜巾頭としてはどうというように、考えるほうがよさそうです。

胴のつくりも、長手もあれば丸手もあり、峰を気にしない系統(というよりも峰の立つ華奢な感じを魅力的とする系統)、峰を嫌う系統など相反する要素もあります。

尾形にしても、小さく可愛い尾が良いという系統もあれば、前掛かりが効いて張りの良い尾が上という系統もあります。



このように、見た目(表現型)に関しては、「これが宇野系」と決めることはできない状況です。

共通しているのは、らんちゅうの多様な魅力に幅広く目を向け、それぞれの要素をより良く改良していくことだと思います。

で...

上の文章に出てきた「それぞれの要素をより良く改良していく」ための「それぞれの基準」が、宇野系らんちゅうのスタンダードになりうるものなのだろうと思います。

オカメタイプならオカメのスタンダードとして、どのようなものを理想とするか。
兜巾タイプなら、どのような要素がどうなっていればより理想的なのか...を考えるということです。

別の機会に書きたいと思っていますが、兜巾は、「大きさ」だけでなく、「肌質」や「膨隆感」といった要素でも評価することができます。
そういったことを、「これについてはこういうものを上とし、こういうものをより上とする」といったようなことをスタンダードとして決めていって点数化していけると、スタンダードに照らしあわせた評価ができるようになります。

スタンダードは、あくまでも評価のための採点基準を決めるということですから、評価の土台となる価値観が違えば採点基準も変わって当然です。

前掛かりが効いて、泳いでもしならない尾が良いと考えるか、泳ぐいだときに、ふんわりと丸みをもってしなり、尾先をしゃなりしゃなりと振り込んで泳ぐ尾が良いと考えるか、で、基準=スタンダードは変わります。

ここまで多様な表現をするようになった「宇野系らんちゅう」について考える場合、「スタンダード」を、それしか認めないという「排他的」なものとして定義するのではなく、我々の評価方法はこうである。という基準を明確にするための「個々の価値観の表現方法」として利用するのが良いのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、宇野氏は、今わかっている限りにおいては、自身の考えるスタンダードというものを後世に伝えられるようにして残すことをされなかったようです。
それが、そういうことに興味がなかったのか... 色々な魚を扱われていたからスタンダードを決める必要を感じておられなかったのか... 時とともに宇野氏自身の考えが常に変化しておられたからなのか... 今は知るすべはありません。

それ故に、氏の言葉の一端を持ちだして、これが宇野のスタンダードというのは適切では無いように思いますし、ほんの一瞬を写しとっただけの写真についても同じだと思います。
(短い一言でも1枚の写真でもそこから読み取れることは沢山あると思うので、それは役立てればいいのでしょうけど、あくまでも沢山の中の1つでしかないということも理解しておく必要があるんだろうなあ。と考えています。)

それよりも、今、宇野系らんちゅうを楽しんでいる人々が、共通に持っている「多様な魅力を楽しみながらより良い魚を創っていく」という部分を尊重し、自分なりの「スタンダード」を表現し、多くの人が「いいね」と言ってくれるスタンダードを考えていくことが、我々世代の努めなのではないでしょうか。


猩々と面かぶりを1つのスタンダードだけで残し伝えていくことは不可能です。

猩々には猩々のスタンダード、面かぶりには面かぶりのスタンダードが必要ですよね。

そのようなスタンダードを多く作っていき、多様な魅力に満ち溢れる宇野系らんちゅうを残していけるといいですね。

2013年10月3日木曜日

当歳を残すということ

今日は、当歳の減らし方・残しかたについて、考えてみたいと思います。

当歳の選別といっても、尾の良し悪しを重視して、なるべく早く数を減らしていくという会用の選別と、胴造りや肉瘤の質を重視する選別とでは、 随分考え方が異なると思います。
瘤太郎は、基本的には胴造りや肉瘤の良し悪しを重視しているので、後者になりますが、だからと言って尾形の良い魚に興味が無いわけでもありません。
胴造りや肉瘤の質を優先しながらも、尾形の良い魚を楽しむには、どうすれば良いかなど、瘤太郎なりの実践方法を紹介してみたいと思います。

 ・ ・ ・ ・ ・

らんちゅうは、尾形でハネれば99%までハネることができるのではないでしょうか?
1000匹生まれても残るのは10匹ほどの計算になります。

さらに、品評会に出品できる魚となれば、その中の2匹ほどでしょうか...
残りの8匹は、数合わせで置いておくか、次の世代の種魚として残しておくという感じでしょう。
そして、その作業を、ほとんどの場合、当歳の間に行っている人が多いのではないでしょうか? 

しかし、胴造りや肉瘤の質を重視する場合、このようなハネ方を行うことはできません。
なぜなら、当歳の間は胴造りや肉瘤の質は、なかなか判断できないからです。
結局、多くの当才魚を残すことになります。

ただ、胴や肉瘤の質を重視する場合でも、5歳、6歳まで残す魚は、せいぜい10匹程度。
尾でハネる方法と実はそう変わらないのです。
違うのは、最終的に10匹ほどまでに減らすまでの時間。ということ。
尾でハネる場合は、当歳の間に10匹にしてしまうが、
胴造りや肉瘤を見るなら、4歳、5歳になってやっと10匹まで絞られる。という感じです。

では、瘤太郎の場合、どのような感じで数が減っていくかをご紹介します。

その前に...

  1000匹生まれても、サシばっかりなどといった感じで、
  ほとんど残らないような場合は、この限りではありません。
  あくまでも、それなりの歩留まりだった場合の減り方とご理解ください。
  また、エラも含めて病気で落とす魚を極力少なくすることも必要です。

瘤太郎は、だいたい人工授精で採卵しますので、卵の90%は孵化します。
ざっと1000匹が孵化したとしましょう。

1)泳がない孵化稚魚をハネる

まず、孵化数日経って、大半の仔が泳ぐようになっても、泳げずに丸まってる
ような仔を処分します。これで800ぐらいになるでしょうか。
(50%以上が泳げない仔の場合、何らかの環境条件の不良があったと
みなして、全て処分する場合もあります。)

2)不正魚を針仔の間にハネる 800匹 → 200~300匹

針仔の時期に、奇形、フナ尾、癒着尾、浮けない仔などをハネていきます。
さらに、サシ、ツマミ、その他のヒレの異常が判断できるようになれば、順次ハネていきます。
スボケについては、安直にハネるということはしませんので残ります。

これらの不正魚をハネていくことで、200~300匹ぐらいにまで減らせられれば、
無作為に分割して、100匹ずつぐらいのグループに分割します。
※この時点でも、100Lぐらいのキングタライで飼育しています。

と、同時に、尾形や体型などが整った魚を、20匹程度選抜して別の舟に移し、
会用やポテンシャルを見るために、大き目に育てるようにしています。

舟の数が足りない場合は、尾型を見てスボケや開き過ぎて反り返っているような尾をハネていきます。
何がなんでも残さなければならないかというと、確率の問題ですから、ある程度の数を残しておければ大丈夫だと思っています。1000種類の形質があるわけじゃ無いですからねえ。

3)青仔から黒子の時期は、成長不良の仔をハネる。

青仔から黒子を経て色変わりが終わるころまでは、鱗ができるなど、大切な時期ですから、あまりいじらないようにしています。
成長不良で他の仔に比べて極端に小さい仔や、成長の過程で顕著になる体の歪みや背腰の不良を持つ仔などをハネていく程度です。
100匹ずつにわけた仔から20~30匹ぐらいハネて各池に70~80匹ぐらい残る感じです。
色変わりをする頃は、ピックアップ組(肥育組)が体長30mm程度、一般組は25mm程度です。

4)色変わりの後の選別

下の写真は、一般組の色変わり直後の魚です。胴の太さはタバコのフィルターぐらいです。

 

これぐらいになってくると、基本的な胴や頭蓋骨の型が決まりますから、それらの型を見て判断していくことになります。

上部中央に2匹ならんでる右側の仔なんて、かなりのスボケですが、 この時点でも残っています。
ただ、体の太さの割に、頭蓋骨の幅広感が無く、背出しがV字状に深くなってデコが狭いですよね。

その左の仔は、丸みのある頭蓋骨が良いですね。横の魚にあるような背出しの直後から背の中央を通る白っぽい筋がありませんので、もしかしたら、背の扁平感の強い魚になるかもしれません。

右上角の仔は、 目幅がありますね。腹付きも良いですが、エラしたから膨らみはじめてるので、ちょっと崩れやすい魚かもしれません。

そのすぐ下の4時を向いている仔は、背幅感がありますね。脇腹から尾筒につながるラインもスムーズでやわらかみがあるので、 良い魚になりそうです。

中央下の魚は、この中では一番細いですね。
細いですが、頭蓋骨に長さがある(デコが長い≒広い)ので、ひとまず残してあります。

この時期から冬眠までは、池のサイズと与えられる餌の量の関係で、減らさないと成長しないという状況を回避するために仕方なく数を減らす程度になります。

上の写真の魚で、仕方なく減らす場合は、中央上2匹の右側、中央下の魚って感じですかね。
中央下の魚は、同じような型のタイプの魚がいなければ、残しておくかもしれません。同じタイプの仔がいれば、その中で、一番細く見える仔をハネていきます。

こうやって、ポツポツとハネていくことで、冬眠直前には各池50匹ぐらいになってるのが目標です。
50匹も残すので、かなり小さいままですよ。

冬眠前のサイズ(体長=鼻先から腹止まりまで)は、肥育組が40mm程度、一般組は30mm程度です。

ここまでが当歳の残し方です。
1000匹うまれて50匹X池数+ピックアップ組20匹ということですね。

少し多いですが、翌年の春、雌雄の判別をしてから減らしていくことにしています。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

せっかくなので、2歳以降もいっときますか...

5)2歳の春

あまり小さいと無理ですが、雌雄の確認ができたら、オスだけとかメスだけというようにならないように気をつけながら、同じような型の仔の中で、目幅や背幅の乏しいものをハネていきます。
冬眠明けに各池50匹程度だった魚を、30匹ぐらいまで一気に減らします。
いつまでも沢山飼い続けていると、さすがに大きくなりませんからねえ。
それでも3池に分けているとしたら、100匹近く残っていることになりますね。
この時、胴や頭蓋骨のタイプを見て、筋の基本になるタイプを中心に、その他のタイプも少しずつは残しておくように配慮しています。

6)2歳の夏から秋

この時期は、あまり減らすことは考えず、健康に育てることに留意して、体を大きくさせていきます。
ハネるのは、長すぎる魚や、極端な寸詰まり、目幅や背幅が乏しい魚などです。
背腰のラインが乱れてきた魚もハネる対象にしています。
2歳の冬眠前に頭から腹までが親指ぐらいになっていれば良いのではないでしょうか。
数は、各池20匹ぐらい、3池に分けていれば60匹ぐらいです。
但し、いずれかの池で極端に数が少なくなってきたら、別の池に合流させてしまいます。


7)3歳

この時期も健康に育てる事に留意して育てます。
なお、兜巾の土台もできてくる時期ですので、土台が極端に縦長になっている魚などは、
他の要素でよほど良い所がなければ、優先的にハネていく候補になります。

また、3歳の頃は、減らすだけでなく、胴や兜巾の質が特に良い魚を、別池にピックアップすることも良くやります。
会用の魚をピックアップして別飼い肥育するのと同じように、筋の親としてふさわしい要素を持っている魚を選抜して、別の舟で飼っておくというイメージですね。
3歳の冬眠前に、全体の匹数としては、会用のピックアップ組3~6匹程度、筋の種親用のピックアップ組6~10匹程度、それ以外の魚20匹程度といった感じです。
それ以外の魚は、ピックアップ組の予備軍という意味合いなので、状況に応じて、胴や頭の質の低いものからハネていきます。
但し、兜巾タイプは、細めの丸胴の魚に多いですから、兜巾タイプを残したいなら、少しはそういったタイプもキープしておくようにします。


8)4歳

この時期は、池の許容量に応じて減らすぐらいで、意図的な選別はほとんどしません。
頭と体を合わせた平均的な大きさは、4歳の冬で鶏卵ぐらいです。
 
9)5歳以降

よほどゆっくり育ててきた魚でも5歳になれば、成長は止まると思います。
ここからは、人間と同じように(?)贅肉がついたり、体の張りがなくなっていくような感じで、
魚が変わっていきます。
4歳から5歳に掛けての冬眠明けで、肉瘤の雰囲気もガラッと変わったりする魚がいます。
5歳の春にペアリングも考えて、筋ごとに3ペア(オスは多めに)程度残せれば良いのではないでしょうか。
会用のピックアップ組は別として、筋の種親候補としてメスが3~5匹、オスが4~6匹ぐらい残すような感じです。
それ以外に、肉瘤だけは絶品とか、背幅だけは凄く良いなんて魚を、観賞用として他の筋の魚とごちゃまぜにして飼ったりしています。

とは言え、残しかたは、会用の筋、種用の筋、肉瘤の筋などで、微調整していますので、
そのあたりは、またそれぞれ個別に紹介していければと思っています。


当歳の残し方・・・ といいながら、結局5歳以降まで書いてしまいましたが、
要するに、胴の質や肉瘤の質を重視している私でも、当歳を全部残しているわけではありません。
収容できる数には限界がありますから、適正な数にまで減らしています。
ただ、減らすときに、尾だけで減らしているわけではなく、胴の型を見て同じようなタイプの中で、より魅力の乏しい魚を減らしていっています。

それでも尾だけの選別に比べれば残す数は多いです。
そんな中に、尾の良い個体も混ぜてしまっては、せっかく会用に使える仔でもポテンシャルを発揮できません。
だから、尾の良い個体は、逆にピックアップして、少ない匹数で肥育するようにしています。

そして、残りの仔を成長が止まらない程度の匹数に調整しながら、健康に育てていきます。

ある程度、胴造りの質が判断できるようになってきたら、それらをまた別飼いにして、肥育していき、筋の親としてのポテンシャルを検証する。という仕組です。

そうやって、1腹1000匹から、5歳ぐらいで10匹程度にまで減らしていくような感じです。


ポイントは、除去と選抜を使い分けること。 だと思っています。
全体の中から明らかに不要な個体を除去することと、飛び抜けて良い個体を選抜して肥育する。それ以外は、もう少し判断できるまで残しておく。
そういった考え方を基本にしておけば、会用も種用も、それぞれに残していくことができると思います。