2013年11月11日月曜日

宇野系らんちゅうの骨格、背幅

さて、先日の「峰っけ=尾根っけ」の用語解説で、峰っけがどういうものか、わかっていただけたでしょうか?

背出しから尾筒まで、背中のてっぺんが山の尾根や家の屋根のように尖っているような状態のことを峰っけといいます。


峰っけを理解して、なるべく峰っけが無く扁平感のある魚を選んで交配していけば、だんだん背幅のあるらんちゅうが出来ていくと思いますが、今回は、背幅について少し掘り下げて考えてみようと思います。

まずは、イラストを見てください。

宇野系らんちゅうの骨格と背幅の関係(模式図)

上のイラストは、らんちゅうの背出し(頭部と体の境目)のあたりで輪切りにした断面を描いたものです。
青い色は骨を表現しています。中央に背骨があり、背骨から両側に丸く肋骨が伸び、背骨の上には神経棘と呼ばれる骨が伸びています。

肋骨に包まれている部分が内蔵です。

骨の外側に茶色い線で書かれているのが筋肉です。筋肉は、背骨を堺に、上側の筋肉と下側の筋肉に分かれていて、その間の体表に近い部分には血合筋という筋肉もあります。
(実際には、上側・下側というだけでなく、もう少し複雑に分かれているはずですが、らんちゅうのサイズでは、肉眼でははっきり見えませんので、このように表現しています。気になる方は、鯉の洗いでも食べにいって観察してください。)

この中で、背幅や峰っけに影響するのは、上側の筋肉の形状です。
Aは、BやCに比べて肋骨が開いていることもありますが、上側の筋肉が横に厚みを持っているので、BやCに比べて背幅を見せます。
さらに、BとCを比べた場合、肋骨の開き方は同じでが、上側の筋肉の横方向の厚みが違います。
Cは厚みがないため、ナス胴の形になり、背幅を狭くしてしまっているのです。

もう1つイラストを見てください。

背幅のあるらんちゅうの骨格(模式図)

上のイラストのDが、いわゆる「背幅のあるらんちゅう」の断面図です。
Aに比べて、上側の筋肉がより扁平になっていることで、背幅を広くしています。
肋骨の広がり方や下側の筋肉は、ほとんど変わりません。
背骨の位置や神経棘の長さは変わらないのに筋肉が低く(扁平に)なったことで、神経棘は体表ぎりぎりまで迫っていますが、それでも背に峰っけはありませんので、神経棘と峰っけは関係無いと考えるほうが良さそうです。
 では、もう1つおまけで...


Wは...  そう「Wakin(和金)」です(^_^;)

和金は、背びれを持ちます。
背びれには、背びれを支える骨(担鰭骨:たんきこつというらしいです) があり、それを筋肉が包んでいるため、筋肉の形状がより尖ったようになります。
こうなってくると、まさしく「峰ってる、切れそう」という感じになりますね。

らんちゅうの場合、この背びれや担鰭骨が無くなり、世代を重ねるにつれて、筋肉や骨格を変化させ、結果的にDのような形になっていったのだろうと思います。

そして、もう1つ...
らんちゅうの体型を決める重要な要素があります。

それが頭蓋骨の形状です。

らんちゅう(宇野系)と和金の頭蓋骨の比較(模式図)

複雑な曲面を2次元で書いているので、わかりにくいイラストかもしれませんが、
Dは、らんちゅうの頭蓋骨、Wは和金の頭蓋骨の模式図です。
赤い線は、斜め上から見たイメージ、緑は真正面から見たイメージです。

このイラストを見比べてわかるように(わかりにくい?)、らんちゅうの頭蓋骨には、おでこの部分に平らな領域があります。
一方、和金の頭蓋骨は、全体的に紡錘形になっており、らんちゅうのような平らな領域はありません。
更に、和金の頭蓋骨の頭頂部には、垂直尾翼のようなものが立っていて、これが極端な峰っけを演出しているようです。


 瘤太郎は、このらんちゅうの頭蓋骨の平らな部分こそが、背出しの背幅感を演出する一番重要な要素だと考えています。
この部分を、より幅広く、より平らに、より低くしていくことが、背出しを低く抑えた幅広い背幅を持つらんちゅうを作っていくポイントなのではないかと考え、この部分に注目して、選別や種親選びをしています。
 さて、最後にもう1枚。

らんちゅうの骨格(模式図)

横からみた骨格です。
肋骨の後ろのほうを黒くしていますが、それよりも前にある肋骨はそこそこの硬さを持っており、黒い部分の肋骨はとても柔らかくなっています。黒より後ろは、二股になっておらず、一本ずつです。

餌を付けてらんちゅうを造る場合、
・内蔵に脂肪をためる
・筋肉を太らせる
・皮下脂肪をつける
というような効果があると思います。

内臓に脂肪を貯めれば、内臓が肋骨を押し広げ、背骨から下の部分を膨らますことができるでしょう。

皮下脂肪は、あまりつかないようですが、多少のくびれを目立たなくするぐらいの効果はあるでしょう。

骨を成長させて、筋肉を太らせれば、体を大きくすることができるでしょう。

ただ... 筋肉の形状を餌で調整できるとは思いませんから、背幅を極端に調整することはできないと思います。

故に、何世代も交配を繰り返す中で、筋肉がより良い形になる魚を種親として選んでいく必要があるのだろうと思います。

そうやって、形が整えられ、肉瘤も充実するらんちゅうの遺伝子を揃えていくことができれば、無理に大きくしなくても、見応えのあるらんちゅうを作っていくことができると思います。

瘤太郎が目指すらんちゅうは、そういったらんちゅうです。

まだまだ改良途中の会筋 (三歳魚達)
写真ではわかりにくいかもしれませんが
親指ぐらいの長さしかありません 。

2013年11月4日月曜日

瘤太郎的・宇野系らんちゅうの用語解説(峰っけ)

瘤太郎的・宇野系らんちゅうの用語解説では、瘤太郎が色々な方から教わった、らんちゅう独特の表現を解説していこうという試みです。
瘤太郎の解釈ですので、愛好会や飼われておられる系統などで、違った解釈をする場合もあると思いますので、その辺りはご了承ください。
(所属する愛好会で違う解釈をしておられる場合は、そちらの解釈を優先された方が良いと思います。)


何からでも良いのですが、今日は「峰っけ(みねっけ)」について書いてみます。


らんちゅうの峰っけとは、峰不二子のような妖艶な魅力を持つことです。


なんていうのは、冗談です。



峰っけの「峰」は山の峰か、刀などの峰の意味で使われていると思います。


しかし...


山の場合、峰(みね)は、峰(ほう)とも読むように、頂上の事をいいます。


らんちゅうとして、峰といっている場合、背の中央に頭部から尾筒にかけて
現れる「尾根」 を言っていることがほとんどです。

尾根は、「山の峰と峰とを結んで高く連なる所。(デジタル大辞泉)」や「稜線」という
意味ですから、峰とは違いますよね。

らんちゅうの背に、尾根のような線が見えることを「峰っけ」と言っているのですが、
山に例えて使うなら「尾根っけ」なんです。


ところで、峰っけのキツイ魚を見た時、「峰っけがすごいね... 切れそう...」と表現する人がいます。

こういった表現をするからには、切れる=刀 をイメージしていると考えた方が良いのでしょうか。

さて、言葉の意味合いについてはこれぐらいにしておいて...
実際の写真を見てみましょう。


上の写真は、親魚サイズですが、峰っけが強く出た魚の写真です。

補助線を引いた写真と見比べてください。


緑色の線の部分が尾根のように尖って見えるために「峰っけ」といいます。

青い線のあたりの断面をイメージしたものが下のイラストです。



左側の青い線で書いた断面が、上の魚の青いラインの部分の断面です。
右側のオレンジ色の線で書いた断面が、峰っけの少ない魚をイメージした断面です。

左側の断面の上のほうが、山の尾根のように尖っていますよね。これが尾根(峰)たる所以です。

泳いでいる魚を見ながらこのような断面をイメージし、背の部分に丸みが無くて尾根のように尖った形になっていると見なせる場合に、「この魚は峰っけがある」あるいは「峰っけが強い」といいます。
ときどき、緑の線の部分に、環境光を反射した白い光の線があるのを見て、峰っけがあるという人がいますが、イラストのオレンジのほう(峰っけのない方)の魚でも、環境光の差し込み方や見る方向(写真を撮る方向)によっては、光の筋が出ることがあります。
峰っけのある魚のほうが、光の線がシャープにでる傾向はありますが、光の線があるからといって峰っけがあると考えるのは不適切です。

2次元の写真から立体を読み取るのは難しいですが、横っ腹からのラインや、尾筒の形、頭部の形状など、様々な情報を読み取って断面をイメージすることができるようになれば、峰っけの有無を正確に読み取ることができるようになりますので、日頃から意識してみてください。


で...


らんちゅうは、背幅があるほうが良いとされています。

背幅の考え方も色々とありますが、瘤太郎は、断面の曲線が水平から30度の接線との接点の内側を背幅と考えています。
側線が背幅とか、目幅が背幅という考え方はしていません。
絵にしてみるなら、以下の様な感じです。


緑の線が、30度の接線ですので、紫色の縦線の間が背幅ということになります。
まあ、特に根拠は無く、人間の背中と脇腹の境目もそんな感じじゃないの?ってぐらいの考えなんですけどね(^_^;)

このイラストだと側線の位置はもっと下の方ですよね。緑の線の下端のもう一つ下の太い目盛線ぐらいの高さにあるんじゃないでしょうか。
そこを背幅とすると、瘤太郎の考える背幅よりももっと背幅があることになります。

まあ、どこからどこまでを背幅というかは、人それぞれだと思いますが、いずれにせよ同じ尺度で考えた場合、峰っけのある魚は、相対的に背幅が無いということになると思います。

だから、胴の質を重視する人は、峰っけを嫌う人が多いのです。

逆に、峰っけがあると華奢に見えますので、丸手の型の可愛い魚を追う場合、あえて峰を見せることで、可愛い雰囲気を演出することができるとは思います。
しかし、そうは言っても目幅の無い魚だけは作って欲しくないなあというのが、瘤太郎の気持ちです。

らんちゅうは、目幅があってふくよかな肉瘤の付いた丸い(四角い)顔を持っていてこそらんちゅうだと思います。
目幅がなく尖った顔だと、なんきんか、まるこになっちゃいます... よね...

ところで、最初の写真の魚ですが、親魚サイズなんです。

随分前の写真です。今の我が家にはこういう背を持つ魚は居ません。
普通、当歳から2歳(我が家では2歳で親指サイズです)の頃までは、峰っけが目立つ魚も居ますが、親になるにつれ肉と油が付いて峰っけは収まってくるものです。
逆に親魚になって肉と油が付いてからでは、先天的な峰っけの有無がわかりにくくなります。
背幅のある筋を作っていきたい場合は、峰っけがわかりやすい二歳頃までに、峰っけの強い魚を淘汰していくようにする必要があるのかもしれませんね。

なぜ、峰っけが出るのかについても書いてみたいのですが、それは用語解説の範疇ではなくなるので、また別の記事として-

2013年11月3日日曜日

宇野系らんちゅうの兜巾の話(肌質と高さ)

前回につづいて兜巾に関するお話です。

色々なスタイルで楽しむことができる「宇野系らんちゅう」ですが、
肉瘤を楽しむ場合は、 兜巾についての知識を増やしておくと、より一層楽しめると思います。

まずは、こちらの写真から。

宇野系らんちゅうの兜巾のバリエーション


同じ系統の3匹です。(出生年は違います)
上の魚の兜巾の肌質と下の2匹の兜巾の肌質は、あきらかに違いますよね。
上の魚もかなり高さのある兜巾を持っているのですが、 肌質としてはカリフラワー状というかブツブツ感が目立ちます。

下の2匹のうち、右の魚は、ブツブツ感の少ないなめらかな肌質を持つ兜巾ですが、高さはあまりありません。

左下の魚は、ブツブツ感の無いなめらかな肌質と高さを持つ魚です。

左下の魚を写した写真をもう1枚。

美しい兜巾を持つ宇野系らんちゅう

ブロッコリーのような溝がほとんど無いぽってりとしたこしあんのような肌質を持っていることがわかります。

で、この兜巾を横から見ると、

横から見た宇野系らんちゅうの兜巾

こんな感じです。
水から上げると兜巾の表面に粒状感が全くないことが良くわかりますよね。
口の中で溶けたアメ玉のようになめらかです。
我が家では、このようななめらかで、大きく、高く、膨隆感を持って隆起する兜巾を持つ魚が時々生まれてきます。
この兜巾の形質を遺伝子として残していきたいと思っています。

皆さんも、もし池でこのような肌質の兜巾を持つ魚を見つけたら、胴や尾が多少悪くても是非残してみてください。


宇野系らんちゅうを「肉瘤」にフォーカスして楽しむ場合、兜巾の大きさだけでなく、兜巾の肌質や膨隆感も意識すると、また違った魚になってくると思います。

さて、兜巾の肌質の1つの表現である「なめらか」ということについての説明はこれぐらいにしておいて、横見の写真をアップしたついでに兜巾の高さについても少し書いてみたいと思います。3枚目の写真を少し加工してみましたのでご覧ください。


黒い点線は、兜巾の端部をなぞって書いたもので、黒い矢印は、兜巾の端部からてっぺんまでの高さです。

一方、青い一点破線は、魚体の輪郭を推定して書いたもので、青い矢印は、魚体の輪郭からてっぺんまでの高さです。

瘤太郎は、兜巾の高さを評価するときは、青の矢印(実質的な高さ)で評価するようにしています。
兜巾の前の方から後ろのほうまで、青い矢印の高さがしっかりあれば、どの角度から見ても、
立派な兜巾を持った魚だとわかります。
 この魚は、現時点で青い矢印の高さで6mmぐらいです。

まだ若い魚なので、これから2年ぐらいは成長を続けると思います。


実は、この魚、すぼけ尾で細長かったので、二歳の頃はハネ水槽にいたんです(^_^;)
で、三歳の春にハネ水槽の水換えをしているときに、兜巾の土台の形が異質だったので(まだ隆起はしてませんでした)、あれ何だこいつ?って感じで気が付いて、胴の型も兜巾型(胡瓜型)なので、もしかしたらと思って、選抜魚水槽に昇格させたんです。
同胎の獅子頭タイプの魚が四歳の春には兜巾がそこそこ隆起していたのに、この魚の兜巾が見れるようになったのは4歳の秋になってからでした。
二歳の頃に選抜水槽でもう少し餌をもらってればもう少し早く隆起したかもしれませんが、やっぱりこのタイプは奥手(晩稲)なんだろうと思います。
ある意味、たまたま気がついただけなので、もしかしたら、ハネ水槽に居たまま、近所の人にもらわれて行ってたかもしれませんね(^_^;)


我が家には基本的に獅子頭の系統しかいなかったので、良い兜巾を持つ魚が出てくる間に兜巾筋を分離しなければと思っているのですが、このような魚を使って作っていきたいと思っています。

兜巾筋を分離して維持改良していく目的は、兜巾をパーツと見立てて、より大きく、高く、なめらかに、膨隆感を持って隆起する兜巾を持つ魚を選別し、その表現をする遺伝子を煮詰めていきたいからです。

私が宇野系らんちゅうをブリーディングしておられる色々な人の色々なタイプの魚を見てきた限りでは、同胎の中でも、より兜巾タイプの特長が出ている魚の方が、より優れた兜巾を持っているようです。
胴が胡瓜型の丸胴で、吻端や目下の肉瘤の発達が控えめなタイプです。
そうであれば、兜巾の遺伝子を煮詰めていくには、兜巾タイプで維持していかなければならないのだろうと考えています。

最終的には、 豊かな兜巾を持つ造りの良い獅子頭の宇野系らんちゅうを作ることが目標なのですが、そのためにも、獅子頭タイプの筋と兜巾タイプの筋をそれぞれに維持改良し、その2つの筋を掛け合わせて目標とするタイプを作っていく。というアプローチで行ってみようかと思っています。