2013年11月11日月曜日

宇野系らんちゅうの骨格、背幅

さて、先日の「峰っけ=尾根っけ」の用語解説で、峰っけがどういうものか、わかっていただけたでしょうか?

背出しから尾筒まで、背中のてっぺんが山の尾根や家の屋根のように尖っているような状態のことを峰っけといいます。


峰っけを理解して、なるべく峰っけが無く扁平感のある魚を選んで交配していけば、だんだん背幅のあるらんちゅうが出来ていくと思いますが、今回は、背幅について少し掘り下げて考えてみようと思います。

まずは、イラストを見てください。

宇野系らんちゅうの骨格と背幅の関係(模式図)

上のイラストは、らんちゅうの背出し(頭部と体の境目)のあたりで輪切りにした断面を描いたものです。
青い色は骨を表現しています。中央に背骨があり、背骨から両側に丸く肋骨が伸び、背骨の上には神経棘と呼ばれる骨が伸びています。

肋骨に包まれている部分が内蔵です。

骨の外側に茶色い線で書かれているのが筋肉です。筋肉は、背骨を堺に、上側の筋肉と下側の筋肉に分かれていて、その間の体表に近い部分には血合筋という筋肉もあります。
(実際には、上側・下側というだけでなく、もう少し複雑に分かれているはずですが、らんちゅうのサイズでは、肉眼でははっきり見えませんので、このように表現しています。気になる方は、鯉の洗いでも食べにいって観察してください。)

この中で、背幅や峰っけに影響するのは、上側の筋肉の形状です。
Aは、BやCに比べて肋骨が開いていることもありますが、上側の筋肉が横に厚みを持っているので、BやCに比べて背幅を見せます。
さらに、BとCを比べた場合、肋骨の開き方は同じでが、上側の筋肉の横方向の厚みが違います。
Cは厚みがないため、ナス胴の形になり、背幅を狭くしてしまっているのです。

もう1つイラストを見てください。

背幅のあるらんちゅうの骨格(模式図)

上のイラストのDが、いわゆる「背幅のあるらんちゅう」の断面図です。
Aに比べて、上側の筋肉がより扁平になっていることで、背幅を広くしています。
肋骨の広がり方や下側の筋肉は、ほとんど変わりません。
背骨の位置や神経棘の長さは変わらないのに筋肉が低く(扁平に)なったことで、神経棘は体表ぎりぎりまで迫っていますが、それでも背に峰っけはありませんので、神経棘と峰っけは関係無いと考えるほうが良さそうです。
 では、もう1つおまけで...


Wは...  そう「Wakin(和金)」です(^_^;)

和金は、背びれを持ちます。
背びれには、背びれを支える骨(担鰭骨:たんきこつというらしいです) があり、それを筋肉が包んでいるため、筋肉の形状がより尖ったようになります。
こうなってくると、まさしく「峰ってる、切れそう」という感じになりますね。

らんちゅうの場合、この背びれや担鰭骨が無くなり、世代を重ねるにつれて、筋肉や骨格を変化させ、結果的にDのような形になっていったのだろうと思います。

そして、もう1つ...
らんちゅうの体型を決める重要な要素があります。

それが頭蓋骨の形状です。

らんちゅう(宇野系)と和金の頭蓋骨の比較(模式図)

複雑な曲面を2次元で書いているので、わかりにくいイラストかもしれませんが、
Dは、らんちゅうの頭蓋骨、Wは和金の頭蓋骨の模式図です。
赤い線は、斜め上から見たイメージ、緑は真正面から見たイメージです。

このイラストを見比べてわかるように(わかりにくい?)、らんちゅうの頭蓋骨には、おでこの部分に平らな領域があります。
一方、和金の頭蓋骨は、全体的に紡錘形になっており、らんちゅうのような平らな領域はありません。
更に、和金の頭蓋骨の頭頂部には、垂直尾翼のようなものが立っていて、これが極端な峰っけを演出しているようです。


 瘤太郎は、このらんちゅうの頭蓋骨の平らな部分こそが、背出しの背幅感を演出する一番重要な要素だと考えています。
この部分を、より幅広く、より平らに、より低くしていくことが、背出しを低く抑えた幅広い背幅を持つらんちゅうを作っていくポイントなのではないかと考え、この部分に注目して、選別や種親選びをしています。
 さて、最後にもう1枚。

らんちゅうの骨格(模式図)

横からみた骨格です。
肋骨の後ろのほうを黒くしていますが、それよりも前にある肋骨はそこそこの硬さを持っており、黒い部分の肋骨はとても柔らかくなっています。黒より後ろは、二股になっておらず、一本ずつです。

餌を付けてらんちゅうを造る場合、
・内蔵に脂肪をためる
・筋肉を太らせる
・皮下脂肪をつける
というような効果があると思います。

内臓に脂肪を貯めれば、内臓が肋骨を押し広げ、背骨から下の部分を膨らますことができるでしょう。

皮下脂肪は、あまりつかないようですが、多少のくびれを目立たなくするぐらいの効果はあるでしょう。

骨を成長させて、筋肉を太らせれば、体を大きくすることができるでしょう。

ただ... 筋肉の形状を餌で調整できるとは思いませんから、背幅を極端に調整することはできないと思います。

故に、何世代も交配を繰り返す中で、筋肉がより良い形になる魚を種親として選んでいく必要があるのだろうと思います。

そうやって、形が整えられ、肉瘤も充実するらんちゅうの遺伝子を揃えていくことができれば、無理に大きくしなくても、見応えのあるらんちゅうを作っていくことができると思います。

瘤太郎が目指すらんちゅうは、そういったらんちゅうです。

まだまだ改良途中の会筋 (三歳魚達)
写真ではわかりにくいかもしれませんが
親指ぐらいの長さしかありません 。

2013年11月4日月曜日

瘤太郎的・宇野系らんちゅうの用語解説(峰っけ)

瘤太郎的・宇野系らんちゅうの用語解説では、瘤太郎が色々な方から教わった、らんちゅう独特の表現を解説していこうという試みです。
瘤太郎の解釈ですので、愛好会や飼われておられる系統などで、違った解釈をする場合もあると思いますので、その辺りはご了承ください。
(所属する愛好会で違う解釈をしておられる場合は、そちらの解釈を優先された方が良いと思います。)


何からでも良いのですが、今日は「峰っけ(みねっけ)」について書いてみます。


らんちゅうの峰っけとは、峰不二子のような妖艶な魅力を持つことです。


なんていうのは、冗談です。



峰っけの「峰」は山の峰か、刀などの峰の意味で使われていると思います。


しかし...


山の場合、峰(みね)は、峰(ほう)とも読むように、頂上の事をいいます。


らんちゅうとして、峰といっている場合、背の中央に頭部から尾筒にかけて
現れる「尾根」 を言っていることがほとんどです。

尾根は、「山の峰と峰とを結んで高く連なる所。(デジタル大辞泉)」や「稜線」という
意味ですから、峰とは違いますよね。

らんちゅうの背に、尾根のような線が見えることを「峰っけ」と言っているのですが、
山に例えて使うなら「尾根っけ」なんです。


ところで、峰っけのキツイ魚を見た時、「峰っけがすごいね... 切れそう...」と表現する人がいます。

こういった表現をするからには、切れる=刀 をイメージしていると考えた方が良いのでしょうか。

さて、言葉の意味合いについてはこれぐらいにしておいて...
実際の写真を見てみましょう。


上の写真は、親魚サイズですが、峰っけが強く出た魚の写真です。

補助線を引いた写真と見比べてください。


緑色の線の部分が尾根のように尖って見えるために「峰っけ」といいます。

青い線のあたりの断面をイメージしたものが下のイラストです。



左側の青い線で書いた断面が、上の魚の青いラインの部分の断面です。
右側のオレンジ色の線で書いた断面が、峰っけの少ない魚をイメージした断面です。

左側の断面の上のほうが、山の尾根のように尖っていますよね。これが尾根(峰)たる所以です。

泳いでいる魚を見ながらこのような断面をイメージし、背の部分に丸みが無くて尾根のように尖った形になっていると見なせる場合に、「この魚は峰っけがある」あるいは「峰っけが強い」といいます。
ときどき、緑の線の部分に、環境光を反射した白い光の線があるのを見て、峰っけがあるという人がいますが、イラストのオレンジのほう(峰っけのない方)の魚でも、環境光の差し込み方や見る方向(写真を撮る方向)によっては、光の筋が出ることがあります。
峰っけのある魚のほうが、光の線がシャープにでる傾向はありますが、光の線があるからといって峰っけがあると考えるのは不適切です。

2次元の写真から立体を読み取るのは難しいですが、横っ腹からのラインや、尾筒の形、頭部の形状など、様々な情報を読み取って断面をイメージすることができるようになれば、峰っけの有無を正確に読み取ることができるようになりますので、日頃から意識してみてください。


で...


らんちゅうは、背幅があるほうが良いとされています。

背幅の考え方も色々とありますが、瘤太郎は、断面の曲線が水平から30度の接線との接点の内側を背幅と考えています。
側線が背幅とか、目幅が背幅という考え方はしていません。
絵にしてみるなら、以下の様な感じです。


緑の線が、30度の接線ですので、紫色の縦線の間が背幅ということになります。
まあ、特に根拠は無く、人間の背中と脇腹の境目もそんな感じじゃないの?ってぐらいの考えなんですけどね(^_^;)

このイラストだと側線の位置はもっと下の方ですよね。緑の線の下端のもう一つ下の太い目盛線ぐらいの高さにあるんじゃないでしょうか。
そこを背幅とすると、瘤太郎の考える背幅よりももっと背幅があることになります。

まあ、どこからどこまでを背幅というかは、人それぞれだと思いますが、いずれにせよ同じ尺度で考えた場合、峰っけのある魚は、相対的に背幅が無いということになると思います。

だから、胴の質を重視する人は、峰っけを嫌う人が多いのです。

逆に、峰っけがあると華奢に見えますので、丸手の型の可愛い魚を追う場合、あえて峰を見せることで、可愛い雰囲気を演出することができるとは思います。
しかし、そうは言っても目幅の無い魚だけは作って欲しくないなあというのが、瘤太郎の気持ちです。

らんちゅうは、目幅があってふくよかな肉瘤の付いた丸い(四角い)顔を持っていてこそらんちゅうだと思います。
目幅がなく尖った顔だと、なんきんか、まるこになっちゃいます... よね...

ところで、最初の写真の魚ですが、親魚サイズなんです。

随分前の写真です。今の我が家にはこういう背を持つ魚は居ません。
普通、当歳から2歳(我が家では2歳で親指サイズです)の頃までは、峰っけが目立つ魚も居ますが、親になるにつれ肉と油が付いて峰っけは収まってくるものです。
逆に親魚になって肉と油が付いてからでは、先天的な峰っけの有無がわかりにくくなります。
背幅のある筋を作っていきたい場合は、峰っけがわかりやすい二歳頃までに、峰っけの強い魚を淘汰していくようにする必要があるのかもしれませんね。

なぜ、峰っけが出るのかについても書いてみたいのですが、それは用語解説の範疇ではなくなるので、また別の記事として-

2013年11月3日日曜日

宇野系らんちゅうの兜巾の話(肌質と高さ)

前回につづいて兜巾に関するお話です。

色々なスタイルで楽しむことができる「宇野系らんちゅう」ですが、
肉瘤を楽しむ場合は、 兜巾についての知識を増やしておくと、より一層楽しめると思います。

まずは、こちらの写真から。

宇野系らんちゅうの兜巾のバリエーション


同じ系統の3匹です。(出生年は違います)
上の魚の兜巾の肌質と下の2匹の兜巾の肌質は、あきらかに違いますよね。
上の魚もかなり高さのある兜巾を持っているのですが、 肌質としてはカリフラワー状というかブツブツ感が目立ちます。

下の2匹のうち、右の魚は、ブツブツ感の少ないなめらかな肌質を持つ兜巾ですが、高さはあまりありません。

左下の魚は、ブツブツ感の無いなめらかな肌質と高さを持つ魚です。

左下の魚を写した写真をもう1枚。

美しい兜巾を持つ宇野系らんちゅう

ブロッコリーのような溝がほとんど無いぽってりとしたこしあんのような肌質を持っていることがわかります。

で、この兜巾を横から見ると、

横から見た宇野系らんちゅうの兜巾

こんな感じです。
水から上げると兜巾の表面に粒状感が全くないことが良くわかりますよね。
口の中で溶けたアメ玉のようになめらかです。
我が家では、このようななめらかで、大きく、高く、膨隆感を持って隆起する兜巾を持つ魚が時々生まれてきます。
この兜巾の形質を遺伝子として残していきたいと思っています。

皆さんも、もし池でこのような肌質の兜巾を持つ魚を見つけたら、胴や尾が多少悪くても是非残してみてください。


宇野系らんちゅうを「肉瘤」にフォーカスして楽しむ場合、兜巾の大きさだけでなく、兜巾の肌質や膨隆感も意識すると、また違った魚になってくると思います。

さて、兜巾の肌質の1つの表現である「なめらか」ということについての説明はこれぐらいにしておいて、横見の写真をアップしたついでに兜巾の高さについても少し書いてみたいと思います。3枚目の写真を少し加工してみましたのでご覧ください。


黒い点線は、兜巾の端部をなぞって書いたもので、黒い矢印は、兜巾の端部からてっぺんまでの高さです。

一方、青い一点破線は、魚体の輪郭を推定して書いたもので、青い矢印は、魚体の輪郭からてっぺんまでの高さです。

瘤太郎は、兜巾の高さを評価するときは、青の矢印(実質的な高さ)で評価するようにしています。
兜巾の前の方から後ろのほうまで、青い矢印の高さがしっかりあれば、どの角度から見ても、
立派な兜巾を持った魚だとわかります。
 この魚は、現時点で青い矢印の高さで6mmぐらいです。

まだ若い魚なので、これから2年ぐらいは成長を続けると思います。


実は、この魚、すぼけ尾で細長かったので、二歳の頃はハネ水槽にいたんです(^_^;)
で、三歳の春にハネ水槽の水換えをしているときに、兜巾の土台の形が異質だったので(まだ隆起はしてませんでした)、あれ何だこいつ?って感じで気が付いて、胴の型も兜巾型(胡瓜型)なので、もしかしたらと思って、選抜魚水槽に昇格させたんです。
同胎の獅子頭タイプの魚が四歳の春には兜巾がそこそこ隆起していたのに、この魚の兜巾が見れるようになったのは4歳の秋になってからでした。
二歳の頃に選抜水槽でもう少し餌をもらってればもう少し早く隆起したかもしれませんが、やっぱりこのタイプは奥手(晩稲)なんだろうと思います。
ある意味、たまたま気がついただけなので、もしかしたら、ハネ水槽に居たまま、近所の人にもらわれて行ってたかもしれませんね(^_^;)


我が家には基本的に獅子頭の系統しかいなかったので、良い兜巾を持つ魚が出てくる間に兜巾筋を分離しなければと思っているのですが、このような魚を使って作っていきたいと思っています。

兜巾筋を分離して維持改良していく目的は、兜巾をパーツと見立てて、より大きく、高く、なめらかに、膨隆感を持って隆起する兜巾を持つ魚を選別し、その表現をする遺伝子を煮詰めていきたいからです。

私が宇野系らんちゅうをブリーディングしておられる色々な人の色々なタイプの魚を見てきた限りでは、同胎の中でも、より兜巾タイプの特長が出ている魚の方が、より優れた兜巾を持っているようです。
胴が胡瓜型の丸胴で、吻端や目下の肉瘤の発達が控えめなタイプです。
そうであれば、兜巾の遺伝子を煮詰めていくには、兜巾タイプで維持していかなければならないのだろうと考えています。

最終的には、 豊かな兜巾を持つ造りの良い獅子頭の宇野系らんちゅうを作ることが目標なのですが、そのためにも、獅子頭タイプの筋と兜巾タイプの筋をそれぞれに維持改良し、その2つの筋を掛け合わせて目標とするタイプを作っていく。というアプローチで行ってみようかと思っています。

2013年10月25日金曜日

宇野系らんちゅうの魅力と楽しみ方(兜巾の膨隆感)

宇野系らんちゅうの魅力の1つが、豊かな肉瘤です。

そして肉瘤の中でも兜巾(ときん)を充実させることが、宇野系らんちゅうだからこそできるの醍醐味なのではないでしょうか。


兜巾とは、らんちゅうの目の上、額の部分に付く肉瘤のことです。

肉瘤の構成は、主に兜巾、吻端(ふんたん)、目の下、目の後ろ(エラの上)の4つのブロックに分かれます。
但し、昨今は、目の後ろの肉瘤は、あまり見栄えが良いものでは無いとされているので、兜巾、吻端、目の下の3つが基本の部位となると考えて良いと思います。

この中で、吻端や目の下の肉瘤が発達している個体は、どのような筋のらんちゅうにも見かけます。

しかし、兜巾の発達した個体は、限られた筋でしか見ることが出来ず、充実した兜巾を持つ個体がコンスタントに出現する筋はとても少ないと思います。

だからこそ、今、兜巾の上がる筋を持っておられる方々に、獅子頭らんちゅうとしての兜巾の大切さを再認識していただいて、兜巾が発達する宇野系らんちゅうの筋をしっかり残して行きつつ、質の良い兜巾へと改良して行っていただきたいのです。


さて、その「兜巾の質」ですが、瘤太郎は以下のように考えています。

兜巾の質の分類
 1)形
 2)厚み(高さ)
 3)肌質
 4)膨隆感
 といった感じです。

「形」は、らんちゅうを上見で見た時の兜巾の輪郭の形状です。
正方形、丸形、長方形、台形などがあり、より幅の広いものが良いと考えています。
できれば正方形か横幅のある長方形が優れていると考え、背のほうが細くなっている台形や、目幅に対して細すぎる長方形は、兜巾の質としては劣っていると考えています。
(瘤太郎は、胴の骨格の良さも重要な要素と考えているのですが、細長の長方形や背の方が細くなっている台形は、胴の骨格が細くなる傾向と考えています。)

「厚み(高さ)」は、横見で見た時の兜巾の隆起の程度で、完成した親魚なら5mm程度あれば充実していると考え、最大では10mm程度にもなる事があります。


「肌質」は、兜巾の表面の状態のことで、凸凹感が無く、水まんじゅうのようにつるんとしたものを理想としています。
変な例えですが、
  つぶあんのおはぎ→こしあんのおはぎ→水まんじゅう
というような感じで兜巾の表面の状態をランク分けしています。
水まんじゅうの肌質の兜巾には深い筋が縦に1本もしくは十字に入る個体もあります。
つぶあんのおはぎのようにブツブツやゴツゴツとした粒状感のある兜巾は評価を下げています。

そして、もう1つの重要な要素が膨隆感です。
膨隆感は、難しい表現ですが、兜巾が他の部位の肉瘤と独立して隆起しており、
兜巾の立ち上がりにくびれた感じがあることです。

上の図では、左側のようになだらかに隆起している兜巾と、右側のように外に膨らみながら隆起している兜巾とを比べた場合、例え兜巾の高さが同じでも、左側の兜巾は見る角度によって高さを感じられなくなることがありますが、右側の兜巾は、どの角度から見ても、しっかり盛り上がっているように見えます。
この兜巾の付け根のくびれ感が、膨隆感を演出するために重要なポイントなのですが、このような形に膨らむ兜巾を持つ魚は極めて少なく、我が家でもなかなか出てくるものではありません。



あまり良い写真ではありませんので、また撮影しなおして差し替えますが、左の魚は膨隆感の少ない兜巾を持つ魚で、右は膨隆感のある兜巾を持つ魚です。
実際の兜巾の高さ(厚み)は、左の魚の方があるのですが、膨隆感が乏しいため目立たないのです。

 ・ ・ ・ ・ ・

このように、形、厚み、肌質、膨隆感といった質を高めていくことが、メリハリのある肉瘤を持つらんちゅうを作っていく上で必要なことだと考えています。

ただ、そのためには、良質な兜巾の遺伝子を持つ魚を手に入れなければならないことと、
兜巾が充実してくる年齢まで(4歳以降)魚を残していく方法を知っておくことです。


残念ながら、いくら餌を付けたところで、兜巾の上がる筋の魚でなければ兜巾の充実は期待できません。(我が家にも、兜巾の上がる筋と上がらない筋があります。)
兜巾の上がる筋でも、良質な兜巾を持つ魚の出現率は低いので、4歳の秋頃まで期待できそうな魚を残して置かなければならないのです。
でも、何十匹も残してられません。だから兜巾が出そうなタイプを見分けて残して置かなければならないのです。

兜巾の出そうなタイプは、すなわち「兜巾タイプ」ということになるのですが、兜巾タイプの目安は、胡瓜型で丸胴の胴を持ち、獅子頭タイプの兄弟魚に比べて吻端や目下の発達が控えめなことです。
そういうタイプを4歳まで残しておければ、「当たり」ならばあるときから急に隆起してきます。
(はずれ→まったく肉瘤があがらない残念な魚)


時々、兜巾は、体の成長が止まってから隆起する。という話を聞きますが、瘤太郎の池で見る限りではそういうわけでもなさそうです。
ただ、兜巾タイプの兜巾が上がってくるのは獅子頭タイプより遅いです。
兜巾タイプはもともと吻端や目下の発達が控えめなので、兜巾が上がり始めるまでは、本当に寂しい顔つきをしてます(^_^;)
ついつい「もう無理かなあ」なんてハネてしまいそうになるんですよね。

2013年10月20日日曜日

宇野系らんちゅうのスタンダードとは?

あなたにとっての宇野系らんちゅうの魅力ってなんですか?

面かぶりや腰白など、鮮やかな赤と白に染め分けられた色柄の美しさですか?

それとも、獅子頭や兜巾頭などの肉瘤の美しさ?

あるいは優雅な泳ぎ?尾形?

いやいや、見た目だけじゃなくて、血統を意識したブリーディングが面白いんだ。とおっしゃる方も多いかもしれませんね。(瘤太郎もこのタイプです)

瘤太郎は、偉大な先達である宇野仁松氏が遺された血統が、数十年の時を経て、様々なスタイルで愛されていることこそが宇野系らんちゅうの魅力だと考えています。

逆に、瘤太郎は、「宇野氏の魚」がどういったものだったのかについては、あまりこだわっていません。
何故かと言うと、もう今となっては、宇野氏の魚のことを体系的に調べていくのは無理だと考えているからです。

宇野氏の魚だといわれる写真が何枚か残っているようですが、その何枚かの写真が宇野氏の魚の全てを語っているとは思えません。
宇野氏だって、色々なタイプを楽しまれておられた可能性がありますよね。
年代によって飼っておられたらんちゅうのタイプが違っていた可能性だってあります。
今、残っている写真は、ある一瞬の「記録」でしか無いと思うんです。
宇野氏と交流のあった方が、それぞれに思い出話の内容が違うのも、そういう背景があってこそなのではないでしょうか。

宇野氏が、らんちゅうを極めた方なのであれば、1つのタイプに固執したのではなく、色々なタイプを育ててみた中で、らんちゅうの軸やバリエーションを見出して行かれたのではないでしょうか。
だからこそ、沢山の人に慕われたのではないのでしょうか...

もし、そうなのであれば、その「色々なタイプのらんちゅうから見出した軸やバリエーションを体系的に書き残したもの」が見つからない限り、 宇野氏の魚を整理をすることは無理だと考えています。

でも... だからこそ、今、多様に広がって楽しまれている宇野系らんちゅうを見ながら、氏と同じように「自分なりの軸やバリエーション」を見つけていくことが楽しいのではないでしょうか?
この楽しみがあるから、宇野系らんちゅうを特別ならんちゅうとして魅了される方が多いのではないでしょうか。

私が宇野氏について考えているのは、それだけです。

本当は、「宇野系」って何?と聞かれても明確な定義ができないから、 このブログでは「宇野系」という言葉は使いたくなかったんです。
だけど、ネット検索などのことを考えると「宇野系」というキーワードを使わざるを得ないので、使わせていただいています。
その辺りの心情をお汲み取りいただければと思っています。

●宇野系らんちゅうのスタンダードとは?

さて、話をこの記事のテーマに戻したいのですが、「様々なタイプとして楽しまれていることこそが宇野系らんちゅうの魅力」と考えた場合、宇野系らんちゅうのスタンダードって何なのでしょうか?

答えは簡単...

「宇野系らんちゅうのスタンダードを1匹の魚で定義することはできない」

それが答えなんじゃないでしょうか。



あえて、今、各地で楽しまれている様々な宇野系らんちゅうに共通する「スタンダード」を考えるなら...
「多様な魅力を追求する」

ということぐらいでしょうか。

そうなると、見た目のスタンダードというより考え方のようなものになっちゃいますね。

それぐらい、宇野系らんちゅうというのは、見た目に関しては多様であると思っています。

例えば、色柄については、猩々、素赤、腰白、面かぶり、黄頭など多様な模様があり、ベタ赤のヒレを上とするといったようなマニアックな楽しみ方もありますよね。

肉瘤は、まったく出てないのはさすがに宇野系としてはNGだと思いますが、オカメタイプは兜巾を持ちえませんし、兜巾タイプの吻端は控えめです。
吻端がなければダメとか兜巾がなければダメというものでも無いように思います。
「獅子頭らんちゅう」 ですから、「獅子頭が基本」ということはできると思いますが、それだけだと宇野系の多様性は半減しちゃいますよね。
獅子頭としてはどう、オカメ頭としてはどう、兜巾頭としてはどうというように、考えるほうがよさそうです。

胴のつくりも、長手もあれば丸手もあり、峰を気にしない系統(というよりも峰の立つ華奢な感じを魅力的とする系統)、峰を嫌う系統など相反する要素もあります。

尾形にしても、小さく可愛い尾が良いという系統もあれば、前掛かりが効いて張りの良い尾が上という系統もあります。



このように、見た目(表現型)に関しては、「これが宇野系」と決めることはできない状況です。

共通しているのは、らんちゅうの多様な魅力に幅広く目を向け、それぞれの要素をより良く改良していくことだと思います。

で...

上の文章に出てきた「それぞれの要素をより良く改良していく」ための「それぞれの基準」が、宇野系らんちゅうのスタンダードになりうるものなのだろうと思います。

オカメタイプならオカメのスタンダードとして、どのようなものを理想とするか。
兜巾タイプなら、どのような要素がどうなっていればより理想的なのか...を考えるということです。

別の機会に書きたいと思っていますが、兜巾は、「大きさ」だけでなく、「肌質」や「膨隆感」といった要素でも評価することができます。
そういったことを、「これについてはこういうものを上とし、こういうものをより上とする」といったようなことをスタンダードとして決めていって点数化していけると、スタンダードに照らしあわせた評価ができるようになります。

スタンダードは、あくまでも評価のための採点基準を決めるということですから、評価の土台となる価値観が違えば採点基準も変わって当然です。

前掛かりが効いて、泳いでもしならない尾が良いと考えるか、泳ぐいだときに、ふんわりと丸みをもってしなり、尾先をしゃなりしゃなりと振り込んで泳ぐ尾が良いと考えるか、で、基準=スタンダードは変わります。

ここまで多様な表現をするようになった「宇野系らんちゅう」について考える場合、「スタンダード」を、それしか認めないという「排他的」なものとして定義するのではなく、我々の評価方法はこうである。という基準を明確にするための「個々の価値観の表現方法」として利用するのが良いのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、宇野氏は、今わかっている限りにおいては、自身の考えるスタンダードというものを後世に伝えられるようにして残すことをされなかったようです。
それが、そういうことに興味がなかったのか... 色々な魚を扱われていたからスタンダードを決める必要を感じておられなかったのか... 時とともに宇野氏自身の考えが常に変化しておられたからなのか... 今は知るすべはありません。

それ故に、氏の言葉の一端を持ちだして、これが宇野のスタンダードというのは適切では無いように思いますし、ほんの一瞬を写しとっただけの写真についても同じだと思います。
(短い一言でも1枚の写真でもそこから読み取れることは沢山あると思うので、それは役立てればいいのでしょうけど、あくまでも沢山の中の1つでしかないということも理解しておく必要があるんだろうなあ。と考えています。)

それよりも、今、宇野系らんちゅうを楽しんでいる人々が、共通に持っている「多様な魅力を楽しみながらより良い魚を創っていく」という部分を尊重し、自分なりの「スタンダード」を表現し、多くの人が「いいね」と言ってくれるスタンダードを考えていくことが、我々世代の努めなのではないでしょうか。


猩々と面かぶりを1つのスタンダードだけで残し伝えていくことは不可能です。

猩々には猩々のスタンダード、面かぶりには面かぶりのスタンダードが必要ですよね。

そのようなスタンダードを多く作っていき、多様な魅力に満ち溢れる宇野系らんちゅうを残していけるといいですね。

2013年10月3日木曜日

当歳を残すということ

今日は、当歳の減らし方・残しかたについて、考えてみたいと思います。

当歳の選別といっても、尾の良し悪しを重視して、なるべく早く数を減らしていくという会用の選別と、胴造りや肉瘤の質を重視する選別とでは、 随分考え方が異なると思います。
瘤太郎は、基本的には胴造りや肉瘤の良し悪しを重視しているので、後者になりますが、だからと言って尾形の良い魚に興味が無いわけでもありません。
胴造りや肉瘤の質を優先しながらも、尾形の良い魚を楽しむには、どうすれば良いかなど、瘤太郎なりの実践方法を紹介してみたいと思います。

 ・ ・ ・ ・ ・

らんちゅうは、尾形でハネれば99%までハネることができるのではないでしょうか?
1000匹生まれても残るのは10匹ほどの計算になります。

さらに、品評会に出品できる魚となれば、その中の2匹ほどでしょうか...
残りの8匹は、数合わせで置いておくか、次の世代の種魚として残しておくという感じでしょう。
そして、その作業を、ほとんどの場合、当歳の間に行っている人が多いのではないでしょうか? 

しかし、胴造りや肉瘤の質を重視する場合、このようなハネ方を行うことはできません。
なぜなら、当歳の間は胴造りや肉瘤の質は、なかなか判断できないからです。
結局、多くの当才魚を残すことになります。

ただ、胴や肉瘤の質を重視する場合でも、5歳、6歳まで残す魚は、せいぜい10匹程度。
尾でハネる方法と実はそう変わらないのです。
違うのは、最終的に10匹ほどまでに減らすまでの時間。ということ。
尾でハネる場合は、当歳の間に10匹にしてしまうが、
胴造りや肉瘤を見るなら、4歳、5歳になってやっと10匹まで絞られる。という感じです。

では、瘤太郎の場合、どのような感じで数が減っていくかをご紹介します。

その前に...

  1000匹生まれても、サシばっかりなどといった感じで、
  ほとんど残らないような場合は、この限りではありません。
  あくまでも、それなりの歩留まりだった場合の減り方とご理解ください。
  また、エラも含めて病気で落とす魚を極力少なくすることも必要です。

瘤太郎は、だいたい人工授精で採卵しますので、卵の90%は孵化します。
ざっと1000匹が孵化したとしましょう。

1)泳がない孵化稚魚をハネる

まず、孵化数日経って、大半の仔が泳ぐようになっても、泳げずに丸まってる
ような仔を処分します。これで800ぐらいになるでしょうか。
(50%以上が泳げない仔の場合、何らかの環境条件の不良があったと
みなして、全て処分する場合もあります。)

2)不正魚を針仔の間にハネる 800匹 → 200~300匹

針仔の時期に、奇形、フナ尾、癒着尾、浮けない仔などをハネていきます。
さらに、サシ、ツマミ、その他のヒレの異常が判断できるようになれば、順次ハネていきます。
スボケについては、安直にハネるということはしませんので残ります。

これらの不正魚をハネていくことで、200~300匹ぐらいにまで減らせられれば、
無作為に分割して、100匹ずつぐらいのグループに分割します。
※この時点でも、100Lぐらいのキングタライで飼育しています。

と、同時に、尾形や体型などが整った魚を、20匹程度選抜して別の舟に移し、
会用やポテンシャルを見るために、大き目に育てるようにしています。

舟の数が足りない場合は、尾型を見てスボケや開き過ぎて反り返っているような尾をハネていきます。
何がなんでも残さなければならないかというと、確率の問題ですから、ある程度の数を残しておければ大丈夫だと思っています。1000種類の形質があるわけじゃ無いですからねえ。

3)青仔から黒子の時期は、成長不良の仔をハネる。

青仔から黒子を経て色変わりが終わるころまでは、鱗ができるなど、大切な時期ですから、あまりいじらないようにしています。
成長不良で他の仔に比べて極端に小さい仔や、成長の過程で顕著になる体の歪みや背腰の不良を持つ仔などをハネていく程度です。
100匹ずつにわけた仔から20~30匹ぐらいハネて各池に70~80匹ぐらい残る感じです。
色変わりをする頃は、ピックアップ組(肥育組)が体長30mm程度、一般組は25mm程度です。

4)色変わりの後の選別

下の写真は、一般組の色変わり直後の魚です。胴の太さはタバコのフィルターぐらいです。

 

これぐらいになってくると、基本的な胴や頭蓋骨の型が決まりますから、それらの型を見て判断していくことになります。

上部中央に2匹ならんでる右側の仔なんて、かなりのスボケですが、 この時点でも残っています。
ただ、体の太さの割に、頭蓋骨の幅広感が無く、背出しがV字状に深くなってデコが狭いですよね。

その左の仔は、丸みのある頭蓋骨が良いですね。横の魚にあるような背出しの直後から背の中央を通る白っぽい筋がありませんので、もしかしたら、背の扁平感の強い魚になるかもしれません。

右上角の仔は、 目幅がありますね。腹付きも良いですが、エラしたから膨らみはじめてるので、ちょっと崩れやすい魚かもしれません。

そのすぐ下の4時を向いている仔は、背幅感がありますね。脇腹から尾筒につながるラインもスムーズでやわらかみがあるので、 良い魚になりそうです。

中央下の魚は、この中では一番細いですね。
細いですが、頭蓋骨に長さがある(デコが長い≒広い)ので、ひとまず残してあります。

この時期から冬眠までは、池のサイズと与えられる餌の量の関係で、減らさないと成長しないという状況を回避するために仕方なく数を減らす程度になります。

上の写真の魚で、仕方なく減らす場合は、中央上2匹の右側、中央下の魚って感じですかね。
中央下の魚は、同じような型のタイプの魚がいなければ、残しておくかもしれません。同じタイプの仔がいれば、その中で、一番細く見える仔をハネていきます。

こうやって、ポツポツとハネていくことで、冬眠直前には各池50匹ぐらいになってるのが目標です。
50匹も残すので、かなり小さいままですよ。

冬眠前のサイズ(体長=鼻先から腹止まりまで)は、肥育組が40mm程度、一般組は30mm程度です。

ここまでが当歳の残し方です。
1000匹うまれて50匹X池数+ピックアップ組20匹ということですね。

少し多いですが、翌年の春、雌雄の判別をしてから減らしていくことにしています。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

せっかくなので、2歳以降もいっときますか...

5)2歳の春

あまり小さいと無理ですが、雌雄の確認ができたら、オスだけとかメスだけというようにならないように気をつけながら、同じような型の仔の中で、目幅や背幅の乏しいものをハネていきます。
冬眠明けに各池50匹程度だった魚を、30匹ぐらいまで一気に減らします。
いつまでも沢山飼い続けていると、さすがに大きくなりませんからねえ。
それでも3池に分けているとしたら、100匹近く残っていることになりますね。
この時、胴や頭蓋骨のタイプを見て、筋の基本になるタイプを中心に、その他のタイプも少しずつは残しておくように配慮しています。

6)2歳の夏から秋

この時期は、あまり減らすことは考えず、健康に育てることに留意して、体を大きくさせていきます。
ハネるのは、長すぎる魚や、極端な寸詰まり、目幅や背幅が乏しい魚などです。
背腰のラインが乱れてきた魚もハネる対象にしています。
2歳の冬眠前に頭から腹までが親指ぐらいになっていれば良いのではないでしょうか。
数は、各池20匹ぐらい、3池に分けていれば60匹ぐらいです。
但し、いずれかの池で極端に数が少なくなってきたら、別の池に合流させてしまいます。


7)3歳

この時期も健康に育てる事に留意して育てます。
なお、兜巾の土台もできてくる時期ですので、土台が極端に縦長になっている魚などは、
他の要素でよほど良い所がなければ、優先的にハネていく候補になります。

また、3歳の頃は、減らすだけでなく、胴や兜巾の質が特に良い魚を、別池にピックアップすることも良くやります。
会用の魚をピックアップして別飼い肥育するのと同じように、筋の親としてふさわしい要素を持っている魚を選抜して、別の舟で飼っておくというイメージですね。
3歳の冬眠前に、全体の匹数としては、会用のピックアップ組3~6匹程度、筋の種親用のピックアップ組6~10匹程度、それ以外の魚20匹程度といった感じです。
それ以外の魚は、ピックアップ組の予備軍という意味合いなので、状況に応じて、胴や頭の質の低いものからハネていきます。
但し、兜巾タイプは、細めの丸胴の魚に多いですから、兜巾タイプを残したいなら、少しはそういったタイプもキープしておくようにします。


8)4歳

この時期は、池の許容量に応じて減らすぐらいで、意図的な選別はほとんどしません。
頭と体を合わせた平均的な大きさは、4歳の冬で鶏卵ぐらいです。
 
9)5歳以降

よほどゆっくり育ててきた魚でも5歳になれば、成長は止まると思います。
ここからは、人間と同じように(?)贅肉がついたり、体の張りがなくなっていくような感じで、
魚が変わっていきます。
4歳から5歳に掛けての冬眠明けで、肉瘤の雰囲気もガラッと変わったりする魚がいます。
5歳の春にペアリングも考えて、筋ごとに3ペア(オスは多めに)程度残せれば良いのではないでしょうか。
会用のピックアップ組は別として、筋の種親候補としてメスが3~5匹、オスが4~6匹ぐらい残すような感じです。
それ以外に、肉瘤だけは絶品とか、背幅だけは凄く良いなんて魚を、観賞用として他の筋の魚とごちゃまぜにして飼ったりしています。

とは言え、残しかたは、会用の筋、種用の筋、肉瘤の筋などで、微調整していますので、
そのあたりは、またそれぞれ個別に紹介していければと思っています。


当歳の残し方・・・ といいながら、結局5歳以降まで書いてしまいましたが、
要するに、胴の質や肉瘤の質を重視している私でも、当歳を全部残しているわけではありません。
収容できる数には限界がありますから、適正な数にまで減らしています。
ただ、減らすときに、尾だけで減らしているわけではなく、胴の型を見て同じようなタイプの中で、より魅力の乏しい魚を減らしていっています。

それでも尾だけの選別に比べれば残す数は多いです。
そんな中に、尾の良い個体も混ぜてしまっては、せっかく会用に使える仔でもポテンシャルを発揮できません。
だから、尾の良い個体は、逆にピックアップして、少ない匹数で肥育するようにしています。

そして、残りの仔を成長が止まらない程度の匹数に調整しながら、健康に育てていきます。

ある程度、胴造りの質が判断できるようになってきたら、それらをまた別飼いにして、肥育していき、筋の親としてのポテンシャルを検証する。という仕組です。

そうやって、1腹1000匹から、5歳ぐらいで10匹程度にまで減らしていくような感じです。


ポイントは、除去と選抜を使い分けること。 だと思っています。
全体の中から明らかに不要な個体を除去することと、飛び抜けて良い個体を選抜して肥育する。それ以外は、もう少し判断できるまで残しておく。
そういった考え方を基本にしておけば、会用も種用も、それぞれに残していくことができると思います。

2013年9月23日月曜日

獅子頭の宇野系らんちゅう

らんちゅうの頭部の形=肉瘤の形には、獅子頭(ししがしら)、龍頭(たつがしら)、兜巾頭(ときんがしら)、おかめ頭などの分類があります。

特に宇野系らんちゅうの場合、肉瘤の豊かさも重要な審美要素になるため、肉瘤の形には気を使うべきと考えています。



今回は、その中の「獅子頭」について少し考えてみたいと思います。


ただ、その前に...


金魚の品種の系譜を見ると、らんちゅうは「まるこ」と呼ばれる品種から派生したことになっているのですが、まるこから派生したらんちゅうには2種類あります。

1つは肉瘤を持たない「大阪らんちゅう」で、もう1つが私達が飼育している肉瘤を持つらんちゅう。大阪らんちゅうと区別するために、発祥地にちなんで関東らんちゅうと呼んだり、獅子頭らんちゅうと呼んでいます。

「獅子頭らんちゅう」であって、「肉瘤らんちゅう」じゃ無いんですよね。

すなわち、私達が飼育している肉瘤を持つらんちゅうの基本は「獅子頭」だと考えるのが素直だと言えそうです。

瘤太郎も、獅子頭らんちゅうのバリエーションとして、龍頭や兜巾頭などがある。と考えており、兜巾については、型だけでなく、パーツとして改良の対象にしています。


さて、本題に戻りますが、獅子頭のらんちゅうのイメージって、どんな感じでしょう?

獅子頭タイプの宇野系らんちゅう

こんな感じ?


あるいは...
獅子頭タイプの宇野系らんちゅう

 こんな感じ?



宇野系らんちゅうの愛好会の品評会を見ていると、獅子頭と呼ぶらんちゅうは、

四角く上がった豊かな兜巾と、目下から目先(フンタン)にかけてしっかりと張り出した
肉瘤をもつ個体をいうことが多いようです。

フンタンだけが飛び出て、目下の張り出しが無い魚を、龍頭と呼び、目下の張り出しや兜巾の膨隆を認める魚を獅子頭と呼ぶことが多いのではないでしょうか?


ところが...



 獅子頭とは、ご存知のとおり「獅子舞」の頭部のことなのですが、
一度、Googleなどの画像検索で「獅子頭」と検索してご覧になってみてください。

一般的な獅子舞の頭を真正面から見ると、頭のてっぺんから顎まで、四角いのです。
 目下の張り出しなんて無いのです。

で、この写真を眺めていて、ふと気になったことがあります。

 「オランダ獅子頭はどうなんだろう?」

これまたGoogleで「オランダ獅子頭 品評会」などと検索していただければ
色々な写真を見ることができますが、やはり目下の肉瘤が強く張り出した個体は
とても少ないのです。
目先(フンタン)の突出と兜巾の膨隆は見事な魚が多いのですが、
目の下は、スッキリしている魚が主流のようです。
これは、東錦でも同じでした。

※もっとも、らんちゅうの場合も、主流といえる協会系らんちゅうの場合、
 フンタンは突出しているが目下はスッキリしている個体が多く、
 画像検索をしても目下のスッキリしたらんちゅうが多く表示されます。
 オランダ獅子頭も、これと同じで、目下の張り出しを意識している
 系統の写真が少ないだけで、探せばあるのかもしれませんが...

オランダ獅子頭の肉瘤の形の良し悪しについては、また機会があれば
調べてみたいと思いますが、
いずれにしても、ご本家の獅子舞の獅子頭をじっくり観察してみると、
頭頂部の隆起はあるので、兜巾の膨隆は必要なのでしょうけど、
目の下の張り出しは、特に目立つわけではありません。
そうであるなら、本来、らんちゅうの獅子頭に目下の張り出しは必要なのか?と
いう疑問が湧いてきたのです。

そんな事をぼんやり考えながら、我が家の池を見ていたところ、
会筋三歳の舟の同胎の2匹の魚の違いが気になったのです。

獅子頭タイプの宇野系らんちゅう(目幅の違い)

この2匹は、同胎の魚(会筋三歳)です。

全体のシルエットは、ほとんど同じように見えると思います。

目先(フンタン)も、2匹ともほとんど同じように十分な突出を見せています。

ただ、右の魚の方が、目下の張り出しが目立つように見えませんか?

これは、右の魚の方が、左の魚に比べて目幅が無いためです。
たぶん、2匹の目下の肉瘤の幅は、ほとんど変わらないと思います。
ただ、目が内側に入っている分、 右の魚の方が、目下が張り出して見えるのです。

まだ三歳なので、この先どうなるかわかりませんが、四歳になれば
兜巾も肥大と膨隆を始め、頭蓋骨も更に大きくなってきます。
その時、左の魚は、目の下に発達した肉瘤を持ちながらも、
それに負けない目幅と兜巾を持つようになり、
真正面から見ると獅子舞の四角い顔と同じような形になるのかもしれません。

一方、右の魚は、目が内側に入ってしまってるので、正面から見ると
ツヅミのような形というか、8の字というか、ひょうたんというか、しもぶくれというか...
要するに四角くは見えないはずです。


すなわち、らんちゅうの獅子頭とは、左の魚のように
ふっくらした目下の張り出しを持ちながらも、それに負けない目幅を持ち、
その上に充実した兜巾が乗ることで、正面から見た顔が四角い顔になり、
さらに十分な目先の突出が加わることで、獅子舞の獅子頭と同じような
顔(形)を持つことなのかもしれません。
後2年、五歳になれば完成すると思いますので、楽しみにしたいと思います。

余談ですが、左の魚の目幅の充実は、兜巾の土台の広さと、
背幅の広さにつながっています。

こういった違いを種魚選びに活かすことも、宇野系らんちゅうでは重視されることだと思います。


でも...

獅子頭に目下の張り出しが要らないのであれば...

今、私達が追っかけている頭部の型は「なにがしら」になるんでしょうね。

ちなみに、兜巾頭タイプの魚は、下の写真のように目下だけでなく目先(フンタン)の突出も
ありませんので、獅子頭と見分けることができます。 (別の腹の魚です)
兜巾頭タイプの参考魚



そうそう。上の2匹は全長(尾先まで入れて)60mmほどです。
小さいですよね(^_^;)
系統的に骨格や肉瘤を充実させていくことで、小さくても貫禄のある姿を
見せてくれます。
これも京都のらんちゅうの醍醐味なのではないかと思っています。
五歳で80mmぐらいに育てれば、出るところの出た造形美に優れた
素敵ならんちゅうになります。


2013年8月24日土曜日

柄物:面かぶり(会用系統三歳)

我が家にいるランチュウは、9割以上が素赤と猩々です。

はっきりわかってはいないのですが、白は優性遺伝?という説もあるので、
基本的に「種は素赤」と考えていますので、更紗は、会用やペット用に
あげてしまう事が多く、ほとんど残りません。

それでも、役物の柄だと残しておくこともあります。

面かぶり 宇野系らんちゅう

 上は、会用系統の三歳。面かぶりっぽく出たものです。
下の魚のほうは、尾先まで赤い「ベタ赤の尾」。胸鰭も先まで赤いです。
右の頬に若干白が差していますが、ほぼ面かぶり。

上の子は、ヒレ先を少し洗っていますが(ヒレ先が白くなってる)、
頭部は顎のしたまで真っ赤です。

同胎ですが、上がメス、下がオスなら 来年一腹とってみましょうかねえ。

そもそも、らんちゅうを始めたきっかけは、フンタンプルプルの面かぶりの
魚を見る機会があって、なんてキュートなんだ!と思ったからなんです。

今は、胴の質だ、兜巾の肌だとか、マニアックなことを言ってますが、
やっぱり紅白の面かぶりランチュウは、それだけで華になる良さがあります。

色柄の美しさを楽しむのも宇野系ランチュウ・京都筋ランチュウの多様な
楽しみ方の一つですから、スペースに余裕があれば、面かぶり系統も
やってみたいですよね。

ちなみに、面かぶりや更紗は、深みのある赤と、パール感のある白が
いいですよね。
もちろん、ベタ赤のちび尾。
フンタンボンボンの龍頭もいいですね。

そして、面かぶりを美しく見せる上で、何よりも大切なのは、
頭の長さと胴の長さの比率。

1 : 1.5ぐらい?

長すぎず、短すぎず、がいいですね。


それと、目幅と側の張り出しがしっかりしてるほうが良いと思っています。
腹幅より頭部が細い面かぶりも、好きになれません。


胴の型の違い

今日は、こちらの3匹を見ながら。


種用系統の当才魚です。
尾の形や開きがそこそこに良い魚だけをピックアップして育てている20匹の群の中の3匹です。
全長は、3匹ともほぼ同じで30mmほど。


目幅


背幅


胴の型


比べてみていかがでしょうか?



上の3匹の向きと長さを揃えて、
並べてみたのが下の写真です。


右の魚が細いことは、わかりますよね。



では、さらに。


補助線をつけてみました。

当歳の宇野系らんちゅうの選別





左と中央の目幅は、ほとんど同じ。右は目幅が少し狭いですね。

背幅は、矢印の先端のあたりの幅で見るのと、矢印の下あたりで見るのとで
違ってきますが、瘤太郎は、矢印の先端付近で見ています。

左の魚と中央の魚の背幅を比べると、矢印の下のあたりの背幅は変わらない
のですが、先端あたりの背幅でみると、中央の魚は少し狭くなっています。

極端な言い方ですが、背出しから筒のあたりまでの背幅の幅を、
線で描くと、左の魚は V  中央の魚は ( ) になっているんです。

ある意味、右の魚も V 字型なのですが、そもそも背幅が細いですよね。

左の魚のように、広い背幅を、背出しからしっかり出してくる魚が貴重です。

背出し部分の背幅の有無は、頭蓋骨の形状によって左右されるようです。
頭蓋骨の背出し部分が扁平で広ければそれにつられて背出しも扁平で
幅広くなると考えています。
この頭蓋骨の形状が、背を抑えた幅広の骨格を持つらんちゅうを作る
上で、重要なポイントだと考えています。


また、 背出しの部分まで広いということは、首が上向きに付いている場合が
多いということ。そのため兜巾も前のめりになりにくく、後端までどっしりと
広い兜巾が乗る可能性が高いです。



さて、もう1つ補助線を付けた腹型についてですが、

左の魚よりも中央の魚のほうが、腹の重心が下(後ろ)にあると表現しています。
左は卵型の腹、中央は水ナス型の腹と呼び分けています。


卵型の腹型を持つ魚は、横への張り出しが充実した頭と組み合わさることで、
宇野系らんちゅうの魅力を「曲線美」として表現してくれます。
但し、腹付きが浅くなるので、 筒が間延びすると下品になります。
また、上見で峰っぽさが目立つと梅干しのタネのように見えるので、
背はしっかり抑えている方が良いと思います。

また、餌が強すぎると、エラ下(エラのすぐ後ろ)からムチッと膨らんでしまうので、
エラ下がスッキリと丸みを帯びるように調整したいところです。

中央の魚のような水ナス型は、会用に仕立てるには、最適です。
水ナス型の魚は、腹の重心が後ろにあり、腹じまいがふっくらするので、
全体として、どっしりとしたシルエットになります。
獅子頭で適度な長さの筒と組み合わされば万人受けする魚に仕上がるでしょう。
ただし、龍になるか、獅子になるかは、系統的なものはあるにせよ、
3歳ぐらいにならないと、わかりません。
なお、水ナス型の魚、腰が高いと腹と筒の境目のくびれが目立つようになり、
筒が細く見えてしまいます。
なるべく、腰のくびれが目立たず、腹から筒に向けてなめらかな曲線を
持つふっくらした感じの魚を残していくようにしたいです。


さて、右の魚ですが...

腹の型は、腹がほとんど横に張り出さないので胡瓜型と呼んでいます。
胡瓜型の中でも背幅と腹幅があまりかわらない場合、丸胴ということに
なります。

兄弟が皆細い場合は、そういう系統なので。ということで終わってしまいますが、
血統的に幅の出る血統で、肉瘤もしっかり載る系統の場合、
右の魚のように、胡瓜腹で丸胴の場合、兜巾型の魚になることがあります。

ただ、腹幅があって、背幅が無いパターンで、特に背出しが細くなっている場合は、
オカメタイプや龍頭タイプになる可能性のほうが高いです。

丸胴の兜巾タイプは、ぽってりと大きな兜巾を載せることがあるので、
尾形の良い魚は、残しておいて、飼いこんで楽しみをとっておくのも良いですね。

ただ、絶対に出るというわけではないですし、兜巾タイプは4歳、5歳になってから
完成するという晩成タイプが多いので、ま、気長に。

なお、写真の右の魚は、それにしてもちょっと頭蓋骨が小さすぎますね。
これでは兜巾が載る土台が作れません。
せめて、左のエラが赤くなってるところぐらいまで背出しが下がってれば
期待出来たかもしれませんが。

ということで、この3匹の場合、

左は、柔らかさや背幅など、種用の質を見極めていく。
中央は、会用兼柔らかみがでてくれば種用にもというどっちも狙い。
右は、とりあえず尾形も良いので、兜巾タイプならラッキーの数合わせ。

という感じでピックアップしています。

ピックアップして大きくしている魚は、全て会用ということではなく、
ある程度大きくしないとわからない種としてのポテンシャルを評価するために
別飼いして大きめに飼っているという意味もあります。
で、尾形が良ければ、種にはダメかなって時は、会用にって感じでしょうか。

2013年8月21日水曜日

我が家の筋の構成

我が家では、魚の骨格(基礎)を作る軸となる筋と、質の良い肉瘤の遺伝子を維持するための筋、そしてまとまりの良い会用の魚を出すための筋の3つに分けて飼育しています。

種用系統(軸)

 骨格や肉付きと肉瘤の形を重視した筋で、我が家の軸となる筋です。

 基本的にインブリード(直系交配)です。
我が家の種用系統の参考魚
我が家の種用系統の参考魚

 上の写真の3匹の場合、左と真ん中は、目幅や背幅、背から腹にかけてのふっくら感などが良くて残しています。右の魚は、二匹に比べると細いのですが、首が上向きに付いているので残しています。




兜巾系統

 良質な兜巾の遺伝子を維持するための筋です。
 兜巾の質は、形、大きさ、肌質で評価します。
 魚が細く、硬くなっていく場合、片親を種用系統から 導入して交配する場合があります。

我が家の兜巾系統の宇野系らんちゅう(参考魚)
我が家の兜巾系統の参考魚

我が家の兜巾系統の宇野系らんちゅう(参考魚) の横見
我が家の兜巾系統の参考魚の横見


 上の1枚目の写真の魚は、しっかりした目幅=広いおでこに、幅のある兜巾が乗っています。
 兜巾の前端部の膨隆感があり、兜巾の表面にブツブツ感が無く、比較的ツルンとして
 いることも気に入っている点です。
 同胎で、もう少し細身に出た魚は、もっとツルンとしてます。

 2枚目の写真は同系統の別の魚ですが、兜巾の高さと形を見てもらうために撮った写真です。
 まだ、若い魚なので、ここからどのように成長していくのか楽しみです。




会用系統

 総合的なバランスを重視している筋です。
 少し短寸に仕上がるように交配を整えています。
 選別では、系統としての種親選びの他、尾形や尾張りも意識して、会用魚を選別をします。
 種用系統と兜巾系統の血を適宜導入しています。
我が家の宇野系らんちゅう 会用の系統
我が家の会用系統の参考魚

 上の写真の魚は、同胎の三歳魚です。
 会用の系統といっても、会用に飼い込んでいるわけではないので、まだ全長60mm弱の小さな魚です。
 尾形や尾の張りの良い魚は、うちに居ると飼い込んでもらえなくてかわいそうなので、
早くに貰われていきます。
 なので、うちでは、そこそこ良い魚を少数選んで別飼いし、ほどほどに大きくしています。
 尾の張り、顔つき、腹の型、長すぎず短すぎない胴・・・ といったところが、会用系統のチェックポイントでしょうか。
 3匹それぞれに顔つき(肉瘤の形)が違うので、見比べてください。



以上の3系統が我が家の筋です。

瘤太郎のこだわり

このブログを楽しんでもらうためには、私の基本的な考えを知っておいてもらうほうが良いですよね。

瘤太郎のこだわり

1)らんちゅうを「筋(すじ)=血統」として改良することを楽しむ

 一匹の優等魚を作ることよりも、仔出しの良い系統を作ることを目標にしています。
 残念ながら、私には時間的にも設備的にも優等魚を目指して飼い込む余裕はありません。
 会向きのキズの少ない仔は、小さいうちに誰かに託してしまいます。
 些細なキズを見るよりも、良い所を沢山持つ魚を安定して出せる筋を作りたいと思っています。

2)ランチュウには、いくつかの型があって、型それぞれに、より美しい表現がある。
  型それぞれに整った形質を持つ筋を作る。

 一般的には、兜巾タイプ、獅子頭タイプ、龍頭タイプというような頭の形を基本にしたタイプ分けがされますが、もう少し細かく分けることができるようです。
 また、あるタイプの頭には、あるタイプの胴の型が似合うという傾向もあるようです。
 そういった、タイプの組み合わせを、整えて、より良い魚を作っていきたいのです。

3)尾でハネるのが一番手っ取り早いが、尾でハネると、尾以外のパーツの形質の良し悪しを見る前にハネてしまうことになるので、多少の尾の問題は、ハネの対象としない。

 奇形魚・不正魚(サシ、ツマミ、ホタテ、背のゴツなど)をハネた後、尾型と尾張りで跳ねれば、生後2ヶ月で生まれた魚の8割はハネることができるでしょう。
 しかしながら、それでは、骨格の良さや、肉瘤の質を見ることなくハネてしまうことになります。
 瘤太郎は、尾は一番遺伝の振れの大きいパーツだと思っていますので、遺伝的には尾よりも骨格や肉瘤の質の保存を優先しています。
 そのため、多少尾の張りが悪くても(場合によってはすぼけていても)、マクレがあっても、残しています。

4)病気にさせない。病気で多数落とすのは、尾でハネてるのと同じこと...

 2歳以降でエラになると、治すのが大変だから、当歳のうちにエラにかけておくという考えで、当才魚を半分ぐらい殺すような飼い方をすることもあるようですが、瘤太郎は二歳以降もエラにさせない飼い方を重視し、当歳をエラにかけて減らすようなことはしません。

5)残った魚の減らし方

 尾でハネず、病気にさせないので、多数が残ります。
 多数残ったままでは大きくならず、ポテンシャルを発揮させることができません。
 そのため、多数残した中から、いくつかのタイプをピックアップして、少数で別飼いし、大きくします。

 それでも残る魚を減らさなければならないので、奇形魚・不正魚をハネたあとは、その腹の平均とくらべて、細い魚、あまりに長い魚、あまりに小さい魚等を跳ねていきます。

全長30mm弱の仔


尾先まで含めても30mmに満たないような当才魚
京都筋宇野系らんちゅうの当才魚
 同胎で、同じように育ててきた、同じぐらいの全長の魚、3匹(左、右、下)です。
 尾形で残すなら、右と下でしょうか。(ちょっと尾が大きいですが)
でも、瘤太郎が順位を付けるなら、左→右→下の順です。
左の魚が、一番骨格のバランスが良さそうです。
また、背から腹にかけてのふっくらした感じが、柔らかさを演出しています。
下は、目幅も背幅もなく、腹が浅い(筒が長く見える)ので、会用にしかなりそうにありません。
右の魚は、特に悪くはないのですが、左の魚と見比べると、太みに欠けます。
ただ、頭骨は大きいので、今後、成長とともに全体の印象も変わってくるかもしれません。